映画「ビブリア古書堂の事件手帖」について語った野村周平さん
女優の黒木華さんと俳優の野村周平さんがダブル主演する映画「ビブリア古書堂の事件手帖」(三島有紀子監督)が11月1日に公開される。三上延さんの人気ミステリー小説シリーズが原作で、本に対して並外れた情熱と鋭い洞察力を持つビブリア古書堂の店主・篠川栞子(しのかわ・しおりこ)を黒木さんが演じ、栞子のもとに本を持ち込み、彼女にひかれてアルバイトを始める五浦(ごうら)大輔を野村さんが演じる。野村さんと三島監督に映画について聞いた。
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◇大輔は「栞子を照らす太陽みたいな人」
--原作もあり、ドラマ化もされた作品ですが、映画化するにあたってどんなところにこだわりましたか。
三島監督:原作はいろいろな本が出てきて、その一つ一つにエピソードがあるのですが、映画では2冊の本に絞りました。2冊の本から見えてくる人間ドラマ、“2本の川”が最後に一つの川になって、一つの思いが現代に伝わっているというテーマをやりたいと思いました。
--そのテーマを表現するためにキャスティングで重視したことは何でしょうか。
三島監督:栞子さんは本を通しての想像力が素晴らしい人です。人間のことを理解している洞察力のある人で、なおかつ本を愛している人、本を読む姿が美しい人にやってもらいたいと思いました。あとは本を音読した時に、美しい声で、書かれている文章の意味合いが深く届く声と表現力をお持ちの方ということで黒木華さんにお願いしました。
--声は大事な要素なんですね。
三島監督:かなり大きいですね。私はキャスティングをする時に声は、とても重要だと思っていて、(同じ作品で)似たような声の人はキャスティングしていないです。今回も5人(黒木さん、野村さん、成田凌さん、東出昌大さん、夏帆さん)が全然違う声の方で、声だけ聞いてもキャラクターがちゃんと分けられるのが理想の形です。
--野村さんは今回どのような役作りをされましたか。
野村さん:監督から「栞子さんは月みたいな方なので、それを照らす太陽みたいな方でいてください」と分かりやすくも、すごく難しい注文があって、どういうことだろうと思いました(笑い)。でもただ明るいだけではダメだなと思っていたので、大輔のキャラクターを作りつつ、現場の雰囲気も作るような感じでしたね。
三島監督:「原作も読まなくていい」と言いました。イメージにとらわれることなく、自身の大輔を演じてもらうのが一番いいんじゃないかなと思って。
野村さん:だから僕は実写化したという感じではないです。「大輔を演じた」という感覚です。
◇黒木華は「本を読んでいる姿が美しい」 書店のセットで「もよおした」ことも
--黒木華さんの印象はいかがでしたか?
野村さん:最初は暗い方なのかと思ったら、全然そうじゃなくて、明るいし、こんな僕を温かく包んでくれる優しい方です(笑い)。あと、その場にしっかりと栞子さんがいましたね。現場に入ると黒木さんというより栞子さんで、おしとやかで、本を読んでいる姿は遠目で見ても本当に美しかったです。お芝居をやりやすくしてくださいましたね。
三島監督:黒木さんも同じことを言っていました。野村さんが演じる大輔さんの受けをやっていれば(演技を受けていれば)自然と(栞子役が)できたので、ここで気持ちを作らなきゃとか一切、必要なかったとおっしゃっていました。
野村さん:(僕らは)お似合いなんですよ(笑い)。
--ビブリア古書堂のシーンは、古書の匂いまで漂ってくるようで、美術へのこだわりを感じました。
野村さん:本屋さんに行ったらトイレに行きたくなるじゃないですか。ビブリア古書堂のセットに入った時にも、もよおしたんですよ。だから、これはちゃんとした本屋ができているなという確信がありました。
三島監督:実際にある古書堂のように作りたかったので、栞子さんがどういう本を置くのかを話し合いながら、美術部が全国の古本屋さんから借りてきてくれた古本が飾られています。
古本屋さんに入った時のほこりっぽい“匂い”を感じてもらうため、実際にほこりをつけています。入口付近の本は売れやすいので、ほこりがたまることはない。奥に行くにしたがって、栞子さんがケガをして掃除ができなかったという設定で、ほこりがついているとしたらどれくらいかと皆で話し合って、かなりマニアックにやっていますね。
◇普段は車やバイクに夢中 読書のきっかけは1カ月のスペイン滞在
--野村さんが演じた大輔は活字恐怖症の役ですが、野村さんは本をよく読みますか。
野村さん:読みたいんですよ。読みたいんですけど、普段は時間があったら車やバイクに乗りに行ってしまうので、本に費やす時間がないんですよ。だから最近はトイレに入ったら本を読むというシステムにしています。
ちょっと前の話を忘れるんですよね。前のページに戻って「ああそうだったな」と復習してから読み始めるから、めっちゃ進みが悪いんですよ(笑い)。
三島監督:野村さんの良いところは、大輔に近いところですね。大輔も本を読まないけれど、人からいろいろなことを吸収したり、栞子を高台に連れて行って、風の匂い、海のきれいさ、空の美しさを知っている人なんですよね。それは野村さん自身にも感じます。
野村さん:それはそうですね。外周りは任せてください(笑い)。
--では本を読むようになったのは今回の映画がきっかけですか?
野村さん:それもありますし……。
三島監督:それでしょ?
野村さん:それです(笑い)。それから興味が出てきて、先輩にも教わって、読んでみようかと思いました。
あと、1カ月くらいスペインに行くことがあったので、その間ずっとゲームをやっているわけにもいかないし、じゃあ本を読もうと思ったのがきっかけですね。スペインで、朝ベランダに出て、コーヒーを飲みながら、パンツ一丁でサングラスをかけて「深夜特急」を読むんですよ。俺、めちゃくちゃ格好いいなと思いました(笑い)。
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