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俳優の山田孝之さんが主演する映画「ハード・コア」(山下敦弘監督)が23日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほかで公開される。山田さん自身が「愛読書」という狩撫麻礼(かりぶ・まれい)さん原作、いましろたかしさん作画のマンガ「ハード・コア 平成地獄ブラザーズ」が原作で、山田さんはプロデューサーも務めた。人間味あふれる超高性能ロボットと、それを取り巻く世間になじめない男たちの友情や鬱屈(うっくつ)、切なくもおかしいユーモアを描いた作品で、山田さん、荒川良々さん、佐藤健さんらが個性的なキャラクターを演じている。
純粋で曲がったことが嫌いな権藤右近(山田さん)は、怪しい活動家が進める山奥での埋蔵金探しを仕事にし、都会の片隅で細々と生きていた。そんなある日、共に働く牛山(荒川さん)が住む廃工場で、古びた謎のロボットを発見。「ロボオ」と命名してロボットと友情を深めていく。右近の弟で商社に勤める左近(佐藤健さん)は、ロボオが現代科学の水準をはるかに超える高性能であることを突き止め、ロボオの能力を生かしたある提案をする……という展開。
どんよりと淀んだ空気に覆われた日常の中で、不満を抱え、いら立ちを隠せない右近。底知れぬ迫力を感じさせる鬱屈した右近を、山田さんが見事に演じている。佐藤さんの知的だがどこか冷めきっている左近役も新鮮で、自暴自棄で厭世(えんせい)的なキャラクターをクールに演じ、朝ドラ「半分、青い。」で見せていた律の柔らかな表情とは異なる一面をのぞかせていた。
右近をはじめ、腐った世の中を悲観している弟の左近、精神薄弱気味の牛山らには笑顔が少ない。シリアスなトーンで物語は進んでいくが、絶妙なバランスで、ツッコミを入れずにはいられないとぼけたユーモアが挿入され、そのギャップに思わず笑いが込み上げてしまう。重要な存在となるロボットは超高性能だがどこか人間味が感じられ、ぶっ飛んだSF要素が加わっていても、違和感なく作品に没頭することができた。(河鰭悠太郎/フリーライター)