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世界的なシンガー・ソングライターとして知られるテイラー・スウィフトさんの3年ぶりの来日公演が2018年11月20日、東京ドーム(東京都文京区)で行われ、新作アルバムの「reputation(レピュテーション)」の楽曲とこれまでのヒット曲の数々が、迫力のパフォーマンスとともに披露された。その際に、ライブを目前に控えたテイラーさんの舞台裏にお邪魔して、短い時間だが直接本人と話す機会に恵まれた。その模様をライブの様子と共にリポートする。
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印象的だったのは、なんといってもテイラーさんの温かい人柄だ。世界的なスターでありながらも、気取ったところが一切ない。28歳とは思えぬ穏やかで落ち着いた雰囲気をまとい、一瞬にして周囲の人を心地よくさせるオーラがあった。いわゆる「わがままで気性の激しいディーバ(歌姫)」といったイメージとは正反対の女性だった。
テイラーさんの周囲のスタッフも驚くほど感じがよかった。「スタジアム公演を1時間後に控えたアーティストをケアするスタッフは、さぞやピリピリと神経を張り詰めているに違いない」と覚悟していたのだが、そんな予想は見事に覆された。記者に対して現場で手順を説明する際、どのスタッフも自然な笑顔を絶やさず、「テイラーさんを全力でサポートしよう」という気概に満ちている。それもひとえに、ツアーを率いるテイラーさんの目が、隅々まで行き届いているからといえるだろう。
厳重なセキュリティーを通過したあとに案内されたVIPルームには、フルーツやドリンクが用意され、ステージ衣装やミュージックビデオにも登場する椅子、そしてテイラーさんがグローバルパートナーを務める富士フイルムの「instax(インスタックス)」が展示されていた。
テレビなどで耳にするテイラーさんの声が、わずか数メール先のカーテン越しに漏れ聞こえてきた。与えられた面会時間はわずか3分。さすがに緊張感に襲われる。いざカーテンを開けるとテイラーさんがこちらに笑顔で近づいてきて、あろうことか記者がかぶっていた帽子を褒めてくれた。初対面の記者に自ら率先して声をかける、そのフランクさにノックアウトされた。
直接交わした言葉はごくわずかだが、来日するたびに必ず「鉄板焼き」を食べに行くことや、日本で気になるファッションアイテムを探すのを楽しみにしていることを明かし、前日に購入したばかりだというトライアングル型のイヤリングも見せてくれた。
また日頃から「テイラー・スウィフトモデル」の「instax」を愛用しているというテイラーさん。撮影距離が「マクロモード」「標準モード」「遠景モード」の3点切り替え式になっているところがポイントだと話し、上手にセルフィーを撮る秘訣(ひけつ)は「なるべく上から撮ること」とアドバイス。するとそれを裏付けるように自ら長い腕を高く掲げ、記者と一緒にセルフィーを撮ってくれた。
その後のライブ中のMCで、「東京ドームでの演奏には、多くのすてきな思い出がある」と話したテイラーさん。ワールドツアーの中でも日本を重要な位置づけにしている理由について「前回の『1989』ワールドツアーは、東京ドームからスタートしたでしょ? だから今回のツアーは東京がファイナルにふさわしいと思ったの。なぜなら日本の皆さんは私たちのことを心から歓迎して愛してくれるから。私たちは日本の皆さんの優しさに本当に感謝しているの」と語った。
今回のツアータイトルは、新アルバム同様「ウワサ」という意味を持つ「reputation(レピュテーション)」だ。前回のワールドツアーの後「しばらく活動を休んでいた」というテイラーさんは「長い時間をかけてじっくり考えた」という新アルバムの制作について、MCでこう明かす。「今回は歌より先に『reputation』というタイトルが頭に浮かんだ。テーマに沿って歌を作るのは、私にとっても初めてのこと。人が自分をどう見ているか全然気にならないこともあれば、気になりすぎて怖くなって、押しつぶされそうになることもある。ウワサ(reputation)やゴシップは、自分がいないときに他人が勝手に言っているだけ。でも自分にとっての真実が、まるでフェイクにしか思えないときもある」と揺れ動く感情を打ち明け、「Delicate」という楽曲を披露した。
ライブの後半、テイラーさんは会場に詰めかけた日本のファンに向けて「カワイイ!」と日本語でコメントし、「みんな私の歌の歌詞にビッタリのファッションで会場に来てくれている」と大喜び。客席をハイタッチしながら駆け回り、ファンと直接触れ合う場面もあった。
日頃から人一倍ファンを大切にすることで知られるテイラーさん。オープニングアクトを務めたアーティストのチャーリーXCXさんに対しても「彼女と一緒にツアーができる私はとってもラッキー」と自ら紹介するほどの気配りぶり。そしてもちろんバンドメンバーやバックダンサー、バックシンガーをはじめとする、すべてのツアーメイトやスタッフに対しても、感謝の気持ちを忘れない。
さらに「ファンの皆さんがいなければ、私の大好きなショーはできません。今夜ここで私たちと一緒の時間を過ごしてくれてありがとう。そして私の人生をこんなに楽しくしてくれてありがとう」と大歓声の会場に向けて呼びかけ、ステージは幕を閉じた。
トップアーティストになっても、決しておごらないテイラーさんの振る舞いこそが、真のスターの証しであると実感させられるひとときだった。
(取材・文:渡邊玲子)