映画「風の電話」の完成披露舞台あいさつに登場したモトーラ世理奈さん(左)と西島秀俊さん
女優のモトーラ世理奈さんがこのほど、東京都内で行われた主演映画「風の電話」(諏訪敦彦監督、1月24日公開)の完成披露舞台あいさつに、共演する西島秀俊さんらと登場した。モトーラさんは質問されるごとにじっくりと時間をかけて考え、言葉を選ぶようにして回答し、なかには1分近く回答に悩む場面もあった。そんなモトーラさんを西島さんは「稀有(けう)な、全くうそをつかない、カメラの前であろうと、今みたいにたくさんの人の前であろうと、うそをつかないっていう才能」とその姿勢を称賛した。
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さらに西島さんは「僕なんかは、皆さんの前にいると、本来の自分ではないことをしてしまったり、カメラの前でも何かしなきゃと考えてしまったりする。でも、モトーラさんは、自分が今感じていること、信じていることを言葉にする方なので稀有な、天才的な女優だと思います」と自身を引き合いに出しつつ絶賛した。
同作は、東日本大震災で亡くなった人々ともう一度会話したいという思いから岩手県大槌町に設置された実在の電話ボックス「風の電話」をモチーフに制作された。震災ですべてを失った主人公・ハルを演じたモトーラさんは、「この役はオーディションだったんですけど、最初台本をいただいた時は、読むのがつらすぎて……。私は小さい頃から親子の話とか、家族の話、家族が亡くなっちゃう話が、一番悲しくなっちゃうお話だったので、台本を読んでいても、読み進められなくて。だから、オーディションも行きたくないなって最初思ってました」と当時の心情を吐露した。
一方で、決められた台本なしで撮影を進めるという、諏訪監督の独特の撮影については「ハルとして演じる中で、ハルがそこにいる場所とか、ハルが誰といるかとか、そういういろんなことを感じながら演じることができました」と振り返った。
この日は、西田敏行さん、三浦友和さん、諏訪監督も登場。モトローラさんについて西田さんも「僕は50年近いキャリアで芝居やってきましたけど、こんなに若い女優さんで、遠くを見つめられる、真実を見つめられる目力の強い表現者に出会ったのは初めてだった。目が合うとすっかり見透かされているような、恐怖と喜びがない交ぜになっているような、不思議な体験をしました」と魅力を語った。
映画のモチーフとなった「風の電話」は2011年に、岩手県大槌町在住のガーデンデザイナー・佐々木格さんが、死別したいとこともう一度話したいという思いから自宅の庭に設置。「天国に繋がる電話」として人々に広まり、東日本大震災以降、3万人を超える人々が訪れている。映画では、心に傷を抱えたハルの、広島から故郷の大槌町への旅路と心の救済を描き出す。ハルと行動を共にする森尾役を西島さんが演じる。
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