検索

いま、推されてます

有村架純:「目で心情を表現」して得たもの 「柔軟性が出てきた」女優としての変化

 女優の有村架純さんが出演する、佐藤健さん主演の映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」(大友啓史監督)が6月4日に公開された。剣心の“十字傷の謎”を握る、雪代巴(ゆきしろ・ともえ)役を演じた有村さんに、役作りや撮影秘話、女優としてキャリアを重ねる上で、自身が感じた変化などについて聞いた。

 ◇巴は「一輪の花のようにスッと立つ女性」

 「るろうに剣心」は、和月伸宏さんの人気マンガの実写化として、2012年に誕生した映画シリーズ。有村さんは今回、シリーズ初出演となる。演じる巴は、愛する人を失って、復讐(ふくしゅう)のために剣心に近づくも、次第に心引かれていく……という役どころだ。

 巴の印象について「とても凛々(りり)しくて、一輪の花のようにスッと立つ女性。バラやチューリップといった目立つ花ではなく、陰で支える縁の下の力持ちのようなイメージがあった」といい、「巴の運命はとても残酷ですが、自分からあえて危険な選択をしているところもあるんです。剣心と出会い、自問自答しながらも、愛する人を思い続ける……。その熱量を考えたら、決して、はかないだけの女性ではないはず」と性格を分析する。

 撮影は2年前の2019年。「健さんから『剣心の役作りは巴から始まっている』と聞かされた際は、『とんでもないところに参加してしまった』と少し後悔したのですが……」と笑いつつ、「普段私は小手先のテクニックでごまかそうとすると、心と体がかみ合わずにうまくいかないことが多いので、自分の中で巴の思いをひたすら毎日膨らませるのみでした。現場では、ずっと剣心さんのままでいてくれた健さんの、その寂しい背中や、孤独感漂うたたずまいに引っ張っていただいた部分がとても大きいです」と語る。

 一方、巴は原作でも人気の高いキャラクターであることから、「原作ファンの方々の顔も、何度も思い浮かべた」といい、「『このシリーズに関わる皆さんの思いを踏みにじりたくない』という一心で、プレッシャーもありましたが、それが原動力にもなりました」と振り返る。

 ◇「4種のカラコン」で印象的な目の演技に “巴を生きるための装備”とは?

 せりふも少なく「自身の思いを目に宿して伝える」巴を演じるにあたっては、「4種類のカラーコンタクトで目にフィルターをかけた」という秘話も教えてくれた。

 「ところどころ裸眼の場面もあるのですが、シーンや心情に合わせて、コンタクトの色味を細かく変えているんです。もともと私はドライアイでまばたきが多い方なんですが、巴がたくさんまばたきをしていたら、映画を見ている方の感情も途切れてしまう気がしたので、視線を動かす時も、極力まばたきをしないように心がけました」という。

 普段、役作りでは「演じるキャラクターに近い人物が登場する小説を読んだり、ドラマや映画を見たり」することもあれば、「実際にその職業に就いている方のインタビューをたどってみたりすることも多い」というが、今回は衣装を担当した澤田石和寛さんのデザイン画にすべてを委ねた。

 「着物もアイメークもカツラの長さもカラコンの種類も、澤田石さんが全て細かくデザインしてくださったので、シーンごとの巴の感情の変化についてもすぐにイメージが湧きました。“巴を生きるための装備”を身に着けて現場に立つだけで、自然とスーッと背筋が伸びたんです」

 劇中、巴が鏡を見て一筋の涙を流すシーンがあるが、そこには有村さんのアイデアが反映されているという。「台本を読んでも巴がどの段階で剣心に思いを寄せたのかはっきりとつかめずに悩んでいたときに、あの時代を生きた女性について書かれた本を読んでみたところ、『鏡を見る行為は、己の心を知ることである』と書いてあったんです。そんなとき台本に書かれた『鏡を見る』という一行が目に留まり、『なるほど』と腑(ふ)に落ちました。巴にとってすごく重要なシーンになったんじゃないかと思います」と明かす。

 完成した映画を見て、「真っ白な雪の世界がなんとも美しくて……。撮影当時を思い出すだけで胸が締め付けられるような、見事なクライマックスに仕上がっていて、繰り返し何度も見たくなりました」と自信をのぞかせる。

 ◇「色気」の理由は…? 今後は「マインドを安定させつつ内面も磨いていけたら」

 過去のインタビューで、「女性が輝き続けるための秘訣(ひけつ)」を聞かれ、「ずっとときめいていたい」と答えていた有村さん。それから4年たつが、「少しずつ理想に近づけている感覚がある」という。

 「お芝居をしたり、作品と向き合ったりするスタンスは何一つ変わっていないのですが、良い意味であまりこだわりすぎなくなってきたというか、柔軟性のようなものも出てきたような気がします」と自己分析する。

 映画のみならずドラマの出演も続くが、最近では「自分の時間も大事にできるようになってきた」そうで、「仕事が本当に詰まっていて忙しかった頃の写真を見返すと、どれもこれもみんな同じような表情をしていて。どこか追い込まれた顔をしているなあと自分でも思ったりします」と、自身の変化を客観的に見つめることもできるようになったという。

 今作では、“カラコン”の力も借りたとはいえ、「目で心情を表現する」演技を経験したからか、「以前よりも目に気持ちが入っている瞬間が、少し増えたのかもしれません」といたずらっぽく笑い、「これからもマインドを安定させつつ、走ったり、ジムに行ったりして、極力できるところは自力で頑張りながら、内面も磨いていけたら」と前を向いた。

 去り際に、「今回、巴から醸し出される色気に圧倒された」と伝えると、「えー、本当ですか……? 私、色気ありました?(笑い)」と目を丸くしつつ、「でも、もしこれまでの役と巴との分かりやすい違いを一つあげるとするならば、しゃべり方を変えたこと。ただせりふを言うのではなく、しっかりと語尾まで発音して、相手の心にちゃんと言葉を置きにいく。巴を生きる上では、そんなしゃべり方を心がけていたかもしれないですね」とその秘密を明かしてくれた。

 映画「るろうに剣心」シリーズは、過去に公開された3作品に続き、最終章の「The Final」「The Beginning」が2部作として連続公開。中国大陸の裏社会を牛耳る謎の武器商人であり志々雄真実を操っていた“シリーズ最恐の敵”雪代縁との戦いと、剣心の“十字傷の謎”に迫る物語を、明治維新後と動乱の幕末期との新時代の二つの時代を通して描いている。

 (取材・文/渡邊玲子)

エンタメ 最新記事

アクセス上位記事