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第一線で活躍する著名人の「30歳のころ」から、生きるヒントを探します。初回は女優の吉田羊さん。当時の思い出や、30歳をより輝かせるためのアドバイス、10月に上演される主演舞台「ジュリアス・シーザー」などについて聞きました。(全3回、編集・取材・文/NAOMI YUMIYAMA)
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10月にオール女性キャストで上演される舞台「ジュリアス・シーザー」が話題だ。座長を務めるのは、今回、初めてシェイクスピア劇に挑む女優の吉田羊さん。テレビや舞台、映画など女優として快進撃を続ける吉田さんだが、意外にも子供時代は目立たない存在だったという。
「以前、三谷幸喜さんの舞台『子供の事情』で演じた役のように、学校ではクラスの中心のグループから三つぐらい離れたところにいる子供でした。地味で目立たなくて、大人になったときみんなが、“そんな子いたね”と思うけれど、顔は思い出せないような」
そんな吉田さんの人生を変えたのが、23歳のときに出会った「芝居」だった。女優仲間と3人で設立した劇団は、小劇場には珍しい実年齢の役者を使う集団として評判に。だが、劇団の立ち上げから3年後、衝撃を受ける出来事が起こった。
「初めて同年代の女優さんと舞台に立つことになったのです。美人で、優しくて、周囲にいつもたくさんの人がいるような人で。彼女の人柄が存分に表れた芝居はとてもすてきで、芝居は技術ではなく、どう生きるかなんだと教えてくれました。といっても、私は彼女のようになれるわけではありません。こんな人がいるなら自分なんていらないんじゃないか、必要ないんじゃないか、と思うようになって……30歳のときに挫折したんです」
人生で初めて生きがいを感じ、夢中で打ち込んでいた芝居の世界。それを失いそうになった挫折体験を、吉田さんはどのように乗り越えたのか。
「もう女優をやめようとまで考えていたとき、他劇団から『この役を羊ちゃんに演じてほしい』とオファーを受けたんです。悩んだ末、この舞台がダメだったりつらかったりしたら女優をやめよう、と決めました。そして舞台に立ち、実際に演じてみたら……残念なことに、これがすごく楽しかったんですね(笑い)。『自分は本当に芝居が好きなんだ』と改めて確信したし、これからはこの気持ちを大事に生きていこうと思えました」
30歳という年齢は、結婚や出産など、女性にとって将来について思い悩む時期でもある。そのことについて、吉田さんは当時どのように思っていたのだろうか。
「今も昔も、私にとって人生のプライオリティーの一番はお芝居なんです。昔から恋愛体質なので、いつも恋はしていたけれど、役者としての行動を制限するような方とはしませんでした。当時は結婚する=何かをあきらめる、という風潮があったので、結婚願望も希薄でしたね。今では、芝居と結婚したという気がしています」
挫折して改めて気づいた芝居への情熱。それは揺らぐことなく今日まで続いている。
「当時から、友達も同じような価値観で、好きなことが一緒な人ばかりに囲まれていました。私自身、いい演技をするにはどうしたらいいだろうということばかり考えていたんです。挫折をしたときも、どこか俯瞰(ふかん)で見て、演技に生かしたいと考えていた自分がいたような気もします。そんな考え方は今も続いていて、もう職業病ですね(笑い)。それが嫌じゃない私にとって、女優は天職なんだと思います」
そう言って、爽やかにほほ笑む吉田さん。スクリーンや舞台で放つ凛としたオーラは、彼女の芝居への揺るぎない情熱の発露なのだろう。30歳の挫折体験は、女優・吉田羊の魅力を作る確かな礎となっている。
<プロフィル>
よしだ・よう 福岡県生まれ。小劇場を中心に、舞台で約10年間活動した後、映像作品にも仕事の場を広げる。2014年の連続ドラマ「HERO」(フジテレビ系)で注目され、現在は、映画やドラマ、CMと幅広く活躍。主演作として映画「ハナレイ・ベイ」(2018年)、近年の出演作に映画「記憶にございません!」(2019年)、連続ドラマ「恋する母たち」(TBS系)、「生きるとか死ぬとか父親とか」(テレビ東京系)など。第24回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。
*……舞台 パルコ・プロデュース2021「ジュリアス・シーザー」▽演出:森新太郎▽出演:吉田羊、松井玲奈、松本紀保、シルビア・グラブほか▽上演:PARCO劇場(東京都渋谷区)で10月10~31日、ほか地方公演あり▽公式サイト:http://stage.parco.jp