映画「再会の奈良」のエグゼクティブプロデューサーを務め取材に応じた河瀬直美さん
第一線で活躍する著名人の「30歳のころ」から、生きるヒントを探します。第4回は映画監督の河瀬直美さん。当時の思い出や、アラサー時代をより輝かせるためのアドバイス、2月4日から全国で順次、公開中の映画「再会の奈良」などについて聞きました。(全3回、編集・取材・文/NAOMI YUMIYAMA)
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◇戦争が残した現実を、ユーモアとやさしさで包む「未来を変える映画」
「なら国際映画祭」でエグゼクティブディレクターを務める河瀬さん。ポンフェイ監督の日中合作映画「再会の奈良」は、映画祭発の若手監督を育成するプロジェクト「NARAtive2020」から誕生した。
映画は、2005年に中国の陳ばあちゃんが、日本で消息をたった養女の麗華を探しに、奈良を訪れるところから始まる。麗華は中国の残留孤児で、実の両親に会うために1994年に帰国したが、数年前から行方不明になっていた。麗華探しに協力するのは、孫娘のようなシャオザーと、偶然出会った孤独な老人の一雄。バイリンガルのシャオザーと、一雄の警官時代の人脈を頼りに、国も言葉も違う3人の麗華探しが始まる……。
すでに東京国際映画祭や中国で公開され、高い評価を得た。ポンフェイ監督を「ポン監督」と愛称で呼ぶ河瀬さんは、ついに日本公開を迎える同作の魅力について「最後の最後まで娘は見つかるのか……という感情とともに、観客は映画を旅していけます。中国残留孤児がテーマですが、決して重くないし、国が異なる人間と人間のコミュニケーションを、ユーモアを織り交ぜて巧みに描いている。ポン監督の才能を感じます」と話す。
そして「現在、日本と中国の関係は非常に微妙な関係にあるけれど、この映画ではまったく知らなかった3人が、一人の人間を一緒に探すという行為でつながっていく。ポン監督は1人のアーティストとして、歴史的事実の中で分断された経験を持つ両国間の架け橋を、映画を通じて担っているんです。未来を変える希望のような映画になったんじゃないかと思います」と、絶賛した。
◇奈良に滞在し、地元の人に可愛がられたポンフェイ監督
いまアジアの映画界が注目するポンフェイ監督は、北京生まれの39歳。パリで映画を学んだ後、台湾映画の巨匠ツァイ・ミンリャン監督の助監督をし、ホン・サンス監督のアシスタントプロデューサーを務めた。
河瀬さんは、中国の名匠ジャ・ジャンクー監督も彼の才能に注目していたことを知り、ジャ監督とともにこの映画のエグゼクティブプロデユーサーに着任。日本でのロケ地やシナリオ、製作面などで伴走し、ポンフェイ監督は奈良県・御所(ごせ)市に滞在しながら映画を作った。
「長年、信頼関係を築いていた奈良という土壌に、中国人のポン監督が参入してくれて。彼のチャーミングさで、御所市の人にたちまち可愛がられる存在になりました。この作品には、彼のそんな魅力が随所にみられます」
新鋭監督の眼差しがとらえたアジアの異国のような御所の美しさもみどころだ。河瀬さんも、「この土地そのものの魅力が存分に出ていますよね。実際ここで暮らす人たちにとっても、外から見た自分たちの暮らしがこんなにすてきだったんだと感じてもらえたら」とほほ笑んだ。
◇國村隼、永瀬正敏と中国のトップ女優の共演
日中合作の妙味はキャストにも。ポンフェイ監督が連れてきた陳ばあちゃんを演じるのは、中国映画界のトップ女優ウー・イエンシューさん。自然体でありながら、心を揺さぶる演技は河瀬さんも魅了されたという。
シャオザー役は、ポンフェイ監督のミューズといえる若手女優イン・ズーさん。元警官役で國村隼さんが、物語の鍵となる男を永瀬正敏さんが演じている。
題名の「再会」という言葉について河瀬さんは語る。
「中国と日本の“再会”という意味のほかに、この後、彼らが未来にも出会っていくという意味もあります。『なら国際映画祭』もそう。映画祭の『コンペティション』というと“競い合う場”というイメージですが、ここで出会って、認め合う場所になっている。近隣アジアの人たちが奈良で対話を重ね、未来でもつながっていくことが私の希望です」
◇プロフィル
かわせ・なおみ 映画作家。生まれ育った奈良を拠点に映画を創り続け、一貫したリアリティーの追求は、カンヌ映画祭をはじめ、国内外で高い評価を受ける。映画監督のほか、東京2020オリンピック公式映画総監督、2025年大阪・関西万博テーマ事業プロデューサー兼シニアアドバイザー、バスケットボール女子日本リーグ会長、ユネスコ親善大使を務める。プライベートでは野菜や米も作る1児の母。
*……「再会の奈良」▽監督:ポンフェイ▽エグゼクティブプロデューサー:河瀬直美、ジャ・ジャンクー▽出演:國村隼、ウー・イエンシュー、イン・ズー、秋山真太郎、永瀬正敏▽2月4日からシネスイッチ銀座ほかで全国公開
*……河瀬さんの「瀬」は旧字体が正式表記。次回は河瀬さんの「30歳のころ」について聞く。2月12日掲載予定
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