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檀れいさんの初主演映画「太陽とボレロ」が公開された。同作で演じたアマチュア交響楽団の主宰者・花村理子に自らの人生を重ね、「なんで、こんな大変なことばかり起こるの!? というくらい試練の連続でした」と笑顔で語る檀さんに、自身のキャリアで転機になった出来事、苦難を乗り越える方法を聞いた。(全3回の2回目、取材・文/服部広子)
「理子さんって、楽団のこともあれば、親から受け継いだ家業の経営のこと、認知症の母親のこと、といろんな問題を一人で背負っている女性なんですよ。私自身も、なんでも自分一人で抱え込んでは頑張ってしまうほうなので、ふと、似てるなあって思いました。
でも、世の頑張る女性はみんなそうですよね。仕事を持って、家庭を持って、親の介護もして、ついつい頑張りすぎてしまう。なかなか弱音を吐けなかったり、弱い部分を人に見せなかったりするのは、私も同じです。できることならいつも笑顔でいたいし、軽やかに見せたいと思っています」
宝塚歌劇団時代は、月組、星組トップ娘役として活躍した。退団後も映画、ドラマと数々の作品に出演してきたが、これまでどのように苦難を乗り越えてきたのだろうか。
「生きていると、誰にだっていろんなことがあります。苦しいこと、悲しいこと、乗り越えなければならない試練ってたくさんあると思うし、それが人生。逃げたくても逃げられないこともあります。
月組のときに真琴つばささんの相手役に抜てきされたときもそうでした。乗り越えなきゃいけない山が次から次へとやってくるので、とにかく寝る間も惜しんで練習するしかない。どんなに山が高くても、自力で乗り越えるしかなかったんです。次の日には待ったなしで幕が開くから。
そのとき、人間、乗り越えられない試練はないんだと思ったんです。これは私自身が成長するために神様が与えてくれたギフトなんだとポジティブに捉えることで乗り越えられたんだと思います」
真琴さんの退団にともない専科に異動した檀さんは、初めて外部の演劇に出演。そこでも大きな試練を経験したという。
「浜木綿子さん主演の喜劇で、現役タカラジェンヌが東宝現代劇に出演するのは十数年ぶりのことでした。宝塚とはお稽古(けいこ)の仕方も、お芝居のテンポも違いますし、男性の役者さんとご一緒するのも初めての経験。
本当に右も左もわからない状況の中で、ただただ共演者の方々にご迷惑かけたくないという思いと、短い稽古期間でどれだけ自分が吸収して本番に持っていけるか、それしか考えられませんでした」
短期間の稽古中は、頑張りすぎて体中に湿布を貼らなければならないほどだったが、「宝塚ではできない勉強ができた」と檀さん。共演した左とん平さんとの思い出を話しながら目に涙を浮かべた。
「姑役の浜さんとの丁々発止のやりとり、植木等さん、左とん平さんなど芸達者な役者さんの柔軟でユーモアあふれるお芝居などすごく刺激になりました。若いときだったから無理もできたし、知らない世界にポンと入れられて、もがき苦しんだ経験が私にいっぱい力をくれました。その後、お芝居をする上で大きく役に立ったと思います。
とん平師匠には公演後も大変かわいがっていただいて、宝塚の舞台もよく観に来てくださいました。あるとき、『檀、お前、芝居がうまくなったな』って褒めてくださったこともあって……。本当にいい勉強をさせていただきました」
*……「太陽とボレロ」/ある地方都市で18年間活動を続けてきたアマチュア交響楽団の解散が決まった。主宰者・花村理子(檀さん)は、音楽を愛する個性豊かな楽団メンバーに翻弄(ほんろう)されながらも最後のコンサートを計画する。
◇プロフィル
だん・れい 1992年、宝塚歌劇団に入団。1999年から月組トップ娘役、2003年から星組トップ娘役を務める。2005年に退団。2006年、山田洋次監督の映画「武士の一分」で映画デビュー。第30回日本アカデミー賞優秀主演女優賞、および新人俳優賞、第44回ゴールデンアロー賞新人賞などを受賞した。
*……次回は6月12日掲載予定