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第一線で活躍する著名人の「30歳のころ」から、生きるヒントを探します。今回は俳優の片桐はいりさん。当時の思い出や、30歳をより輝かせるためのアドバイス、10月17日から上演される野外劇「嵐が丘」などについて聞きました。(全3回の3回目、編集・取材・文/NAOMI YUMIYAMA)
◇恋愛ドラマを超えた? 新感覚の「嵐が丘」に挑む
「嵐が丘」は、東京都豊島区池袋を中心に開催される「東京演劇祭」で上演され、演出は片桐さんにとって10年来の親交がある劇団「カンパニーデラシネラ」を主宰する小野寺修二さんが手掛ける。片桐さんにこの作品に懸ける思いを尋ねた。
「私、今年が芸歴40周年のメモリアルイヤーなんです。だから華やかな舞台に出られるのかな、と思っていたら、小野寺さんという身体表現をやっていらっしゃる方に、野外劇のオファーをいただいた。
最初は、なぜ路上に戻ってしまったんだろうと思いましたけれど、考えたらそれがいいかなと。もともと道端で芝居をやって、通る人が振り返ったらいいなという思いが、私の演劇のエネルギーの根っこだったので。だから40年たって、原点に立ち返れってことだと思いました」
1847年にイギリスで生まれた「嵐が丘」は、エミリー・ブロンテの「世界三大悲劇」の一つと呼ばれる名作。風吹きすさぶ荒野を舞台に、幼なじみのキャサリンとヒースクリフの恋愛が描かれる。
「『嵐が丘』は中学のとき、一生懸命に読んでいて、すごく激しい恋愛ものというイメージでした。でも最近また読み直してみると、もう恋愛を超えているというか。男とか女とかいう話でもなく、魂がつながってしまった二人が喜んだり、引き裂かれたり、亡霊になって出てきたりする話だなと思いましたね。
小野寺さんに、私は何の役をやるのと聞いたんです。主役の二人ではないだろうから、物語のナレーター的な感じで出てくる家政婦の役かなと思いながら。でも、『違います』と言われて(笑い)。『まさかキャサリンじゃないよね?』と聞いたら、一人がいろんな人物を演じる構成だと知ったんです。今までにない新しい『嵐が丘』になる予感がしました」
◇いろんなパワーが紛れ込む野外劇の魅力
今回の「嵐が丘」が、野外劇であることも、ワクワクする要因だと片桐さんは語る。
「野外劇って俳優にとっては、すごく意欲が湧くんです。演劇に興味はないけど、たまたまその場を通った人に、『ん? おもしろいかも?』と足を止めさせることができるのか。俳優の力量が試されるわけですから。
あと私は土地が持つ、地面のパワーってすごくある気がします。池袋は、昔、テントを張って演劇をやっていたことがあるのですが、当時は今と違って怖くてなかなか来られない場所でした。芝居をしているといろんな人たちが舞台に紛れ込んできて、秩序のない状態になって(笑い)。でも、それがすごく楽しかったですね。本物の風や雑踏の音も入ってくるでしょうし、きっと面白い舞台になると思います」
円形舞台で上演される公演は無料で見ることができ、座席のチケット代は500円(完売)に設定した。そこには、「演劇を見たことのない人に見に来てほしい」という片桐さんの思いがある。
「演劇って、チケットが高いので、一度も見たことがない人にとってはハードルが高いなと思っていました。たまたま近くに来た人も通りすがりに見てもらえます。見て興味を持てなかったら、近くのデパートでお買い物をしてもいいし、映画館で映画を楽しんでもいい(笑い)。ダンスもある、面白いパフォーマンスに仕立て上げますので、10月17日から10日間、池袋を通りかかってみてください」
<プロフィル>
かたぎり・はいり 1963年1月18日生まれ。東京都出身。大学在学中に映画館でもぎりのアルバイトをしながら、劇団で舞台デビュー。その後、CM、映画、テレビドラマと幅広く活躍。代表作に舞台「キレイ~神様と待ち合わせした女」「異邦人」、映画「かもめ食堂」「私をくいとめて」、ドラマ「あまちゃん」「富士ファミリー」など。エッセー「もぎりよ今夜も有難う」は、第82回キネマ旬報ベスト・テン読者賞を受賞。
*……野外劇「嵐が丘」▽作:エミリー・ブロンテ▽演出:小野寺修二▽訳:小野寺健▽上演:10月17〜26日▽場所:GLOBAL RING THEATRE(池袋西口公園野外劇場)