モデルとして長年、ファッション誌の表紙を飾るいっぽう、1990年代はバラエティー番組でも人気を博した梨花さん。38歳で出産後、家族とハワイへ移住してから10年以上の月日が流れた。来年50歳を迎える心境について、「もう一度、自分を見つめ直そう、自分を好きになろう、という気持ちになった」と笑顔を見せる梨花さんに、これからの生き方について聞いた。(取材・文/服部広子)
◇命には限りがあると実感するように
「50歳まであと半年。11歳になる息子の手も離れ、子離れ、親離れ、あと、子が巣立った後の自分の人生とか、そういう課題がしっかりと見えてきたんです。ここでもう一度、自分を見つめ直してみよう、自分を好きになろう、という気持ちになりました。
ただそうは言っても、50歳になるって、やっぱり大変ですよ。50代になるのを楽しみにしていたなんて、絶対に言えない(笑い)。
でも、嫌だと言っていても50歳は来ちゃうし、10年後は60歳ですよ。だったら、人生が少しでも楽しくなるためにはどうやって生きていったらいいのかなと、そういうマインドに切り替えたほうがいいと思ったんです」
そう考える理由は、「40代が一番つらかったから」と梨花さん。
「子育ても、移住も、ブランドの立ち上げも、家を建てたのも、全部重なってしまって。ただそれだけのことだと言えばそうだし、タイミングだと思います。だけど、私はものすごくつらかったんです。だから、50代は絶対、楽しくしてみせる!って思うし、絶対、楽しくなると思っているの(笑い)」
大事なことは、「自分の価値は自分で上げてあげること」。
「ものや情報があふれる世の中。SNSを見れば、隣の家族がどんな部屋に住み、どんなものを食べているのかまでわかってしまいます。ついつい、周りを気にしてしまって悩んだり、不安になったり。今までだったら、知るよしもなかった情報に振り回されて、凹んでしまうこともあります。
でも、それって自分の価値を自分で下げてしまっていることだと思います。実際、私自身もそうでした。ずっともじもじしていたもの(笑い)。ただ、50歳になっても、まだもじもじしていたらカッコ悪いし、自分が何を選択するか、どういうふうに生きていきたいか、ということを見つめ直して進んでいくことが大事だなと考えるようになりました」
また、近ごろはふと、自分はどんな死に方をするんだろうと頭をよぎることがあるという。
「もちろん、現実的に考えているわけではないですよ。ただ、命には限りがありますから、余生や死について考えることはあります。そうすると、やっぱりダラダラと余生を送って死んでいくのは嫌だなあって。まだまだ元気な今、マインドをチェンジして、精いっぱい生きていこうと思うんです」
◇子供が11歳に おしゃれをしたい気持ちが戻ってきた
その一環として、自身がブランドファウンダーとなり、セルフケアブランド「AKN/R(アクニー)」を手がけた。第1弾に選んだヘアケアラインの目玉は女性向けの育毛剤。髪のボリュームなどに悩む同世代の女性に向けて開発した。
「頭皮も顔と同じようにスキンケアが必要で、特に、私たち世代は、ケアをしているかどうかで違ってくる。ビジュアルにもこだわりました。育毛剤は、なぜかネガティブなイメージがあるなど課題があると感じていて、みなさんの認識、イメージを変えていけたらと思ったんです」
ブランドに込めた思いは、「年齢を重ねるたび、私たちはもっと輝ける」。大人の女性が抱える悩みに寄り添い、楽しくキレイになることを、商品を通して伝えていきたいという。
「昔のような若さを取り戻すとか、そういうことではないんです。子育てや仕事で忙しくしていて、近ごろちょっと後回しにしていた自分のことをもう一度、見直してみませんかという提案です。ちょっとおしゃれをしようかなとか、キレイになりたいという気持ちを思い出してもらえたら。
私自身も、子供が11歳。ようやく、この1~2年でそういう気持ちになれて、それが今回のヘアケア製品の開発につながりました」
また、自身が考える“美しさ”の概念も変化した。
「日本語で言うと、“つつましい”とか、“秘める”みたいなこと。これまでは、繕うことをしないことが美しいと思っていたんです。でも、堂々としていることはいいけれど、言う必要のないことは言わなくてもいいし、見せる必要のないところは隠してもいいんじゃないかと考えるようになりました。いろんなことを経験して、一つの事柄も、今までとは違う側面からも見られるようになってきたような気がします」
◇「べきべき人間」から卒業したい
取材中、「楽しみたい」と繰り返した梨花さん。楽しく生きるためにしていることを聞くと……。
「毎日寝る前に、『今日は〇〇ができたからよし!』とか、小さいことでもいいので、自分自身を認めてあげて、自分を褒めてあげることが大事なんだと思います。あとは、当たり前のことですけど、周りの人への感謝の心を持つこと。自分がどれだけ恵まれているのか、それは常に忘れちゃいけないと思っています」
また「いつもハッピーで、JOYな梨花」というパブリックイメージとは異なり、生真面目でストイックな性格とも闘っている。
「何でも『やらなくちゃ』『すべき』と考えてしまうタイプなんですよ。だから、楽しもうと思っても『楽しまなきゃ!』という気持ちとギアが入っちゃう(笑い)。
そこで考えたのは、“ぐらい”の感じで生きていけるマインドを持つこと。ちょっとずつ、“これぐらい”がいいと思えるような余裕を持てたらいいなと思っているところです」
<プロフィル>
りんか 1973年5月21日生まれ。東京都出身。19歳でデビュー。モデルとしてさまざまなファッション誌の表紙を飾り、バラエティー番組でもブレーク。36歳で結婚し、翌年、男児を出産した。現在は日本とハワイの2拠点生活を送っている。
*……トータルセルフケアブランド「AKN/R」▽薬用ヘアスカルプセラム(医薬部外品)、薬用ヘアシャンプー(同)、薬用ヘアトリートメント(同)のほか、スカルプブラシ、スカルプブラシも扱う▽公式サイト:https://aknir.jp