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3人の子供たちとパリでの生活を始めて、もうすぐ1年になる俳優の杏さん。YouTubeチャンネル「杏/anneTOKYO」が人気を呼び、俳優としても次々に話題作に挑戦している。7月28日に公開された映画「キングダム 運命の炎」(佐藤信介監督)を機に、撮影の舞台裏やパリ生活で得たもの、最近の子育てについて聞いた。(編集・取材・文/NAOMI YUMIYAMA)
――パリと東京の2拠点生活はだいぶ落ち着きましたか。
「いま、やっとスタート地点に立てたという感じです。フランス語もまだ自由に話せるくらいには至っていないので、今も頑張り中です(笑い)」
――今振り返ると、2拠点生活を決断した頃の気持ちは。
「私自身は、まったくためらいはありませんでした。友人たちの反応も“杏はいきなり方向転換することがあるよね”とか“昔からそういう感じだよね”と言う感じで(笑い)。ただ自分一人なら、もう少し行きあたりばったりだったと思うのですが、子供たちの人生を大きく変える決断でもあったので、そこは覚悟を決めました。子供たちができるだけ暮らしやすい環境は整えたいと思いました」
――それから約1年、これまでのパリ生活で得たものは。
「パリは移民も多いし、さまざまな国のいろいろな考え方を吸収して、料理や絵などに触れ合えることは、子供たちの良い経験になっているんじゃないかと思います。私自身も、日々の生活で、たくさんの感動をもらいました。多くの文化に触れられるのは東京も同じですが、二都市の違いを知ることが出来たのも面白くて、良い経験になっていると思います」
◇「キングダム合宿」で地方ロケを乗り切る
映画「キングダム 運命の炎」は、原泰久さんの人気マンガを映画化した大ヒットシリーズの3作目。紀元前の中国を舞台に、戦災孤児の少年・信(山崎賢人さん)と、秦の若き王であるエイ政(吉沢亮さん)が中華統一を目指すストーリー。杏さんは、人質となっていたエイ政の救出作戦を請け負う、闇商人の紫夏(しか)役を熱演する。
――紫夏は、未来の国王になるエイ政の人生を変える重要な役柄です。オファーされた時の気持ちは。
「もともと原作は好きで読んでいて、出産後、初めて映画館に見に行ったのも『キングダム』でした。続編があれば出たいなと思っていたので、オファーをいただいたときはうれしかったです。撮影現場には必ず、紫夏の出ている原作の8巻を持って行き、撮影の合間にもセリフや気持ちを確認しながら演じていました」
――エイ政の救出作戦シーンでは、矢を使った馬車の上での激しいアクションに挑戦しています。事前に準備したことは。
「このシーンでは、馬車の上でいかに素早く、弓に矢をつがえることができるかが大切でした。ですのでダミーの弓をお借りして、自宅で矢をスピーディーにつがえる練習をずっとしていました。完成した映像はすごく迫力がありましたし、すごく壮大なシーンになったと思います」
――地方でロケがあったときは、友人の家族と「キングダム合宿」をしたそうですね。
「地方での撮影期間中はシッターさんにお願いすることが難しかったので、小学校の同級生3家族ぐらいに頼んで、子供たちと一緒に泊まり込みをしたんです。私は朝と夜、ミートソースとかを作って終日仕事に行き、その間、みんなには公園で遊んで過ごしてもらいました。
合宿には『キングダム』の全巻を持っていったので、空き時間にみんなで読みながら、『映画の完成は3年後か。想像できないね~』と話していました(笑い)。地方ロケが成立したのは、みんなが力を貸してくれたおかげです」
――映画では、エイ政を命がけで守ろうとする紫夏の姿に、母性を感じました。このシーンで心に残ったことは。
「エイ政と紫夏、知り合ったことのない二人が助け合えるというところがすてきだなと思いましたし、真の無償の愛を感じました。だからこそ、それがエイ政の人生を大きく変えたのだと。私も親になって、教えたり与えたりするような機会が増えてきましたが、それは親子の無償の愛というより、実は今までに誰かから受けてきた恩恵を、子供たちに受け継いでいるんだなと、このエピソードで感じました」
――杏さん自身が、普段子供たちと接する上で大切にしていることは。
「子供たちには、あまり現状を肯定しないような言葉は言わないようにしよう、と言っています。たとえば『ずるい』だったら、『いいな』に変えるとか、もっといい言葉があったら、それを使おうよって。
あと最近は子供たちを叱るとき、『お母さんは』ではなく、『私は』と言っています。お母さんだから言う事を聞いてほしいのではなく、人生の先輩として、私個人はこう思うから注意しているという思いを込めて。もちろん実際に言うときのテンションは、こんなに冷静ではないんですけど(笑い)」
――最後に、今後の抱負を教えてください。
「これからも2拠点生活で、ときには私が単身で日本に帰ったり、家族で帰ったりして、やっていきたいと思っています。仕事面では、とにかく目の前にあることに対して真摯に向き合うだけです。また、ヨーロッパはいろんな国に近いので、これからも時間をみつけてあちこち旅行に行ければなと思います」
<プロフィル>
あん 1986年4月14日、東京都生まれ。2001年にモデルデビューし、ニューヨークやパリ、東京などのコレクションで活躍。2007年に女優デビュー。その後は、ドラマ、映画などで活躍。2022年、国連WFP親善大使に就任。今年は劇場版「TOKYO MER~走る緊急救命室~」が公開されたほか、9月1日にオムニバス映画「私たちの声」の公開を控える。
*……山崎賢人さんの「崎」は立つ崎(たつさき)