大浴場。左が36度、右が40度の浴槽。特に左の方が炭酸の泡がよく見える
飛騨の山間の小さな集落、小坂(おさか)町湯屋地区に泉岳舘はある。泉岳舘の湯は、自家源泉で天然の炭酸泉。正式には二酸化炭素泉といい、日本の温泉のうち0.5%ほどしかないといわれるとても稀少な湯だ。肌や髪に優しい弱酸性で、肌や毛穴を引き締めて皮脂の分泌を抑え、キメを整えたり、血行促進やむくみを取ったりすると考えられる、キレイに導いてくれる泉質だ。
大浴場には36度と40度の二つの岩造りの内風呂がある。ともにぬるめだが、つかっていると体がぽかぽかしてくるのがわかる。筆者は、より炭酸のぷくぷくした泡を実感できるので、36度の浴槽が特に好きだ。夏は気持ちの良い温度なので、ずっと36度の浴槽につかっているほど。
露天風呂が好きな人には、無料の貸切露天風呂もある。温泉がついた客室もあり、筆者が宿泊した客室「かたくり」には総檜(ひのき)造りの露天風呂がついている。さらさら流れる美しい緑の水が眩(まぶ)しい大洞川を眺めながらの入浴は、日々の喧騒(けんそう)を忘れさせてくれる。
ウエルカムスイーツ&ドリンクは、炭酸泉で蒸かしたまんじゅうと炭酸泉で淹(い)れたコーヒーやカルピスソーダ。飲泉可能な源泉なので、食事にも炭酸泉をいかした料理や飲み物がいろいろとあり、とても楽しいのだ。
特に筆者が好きなのは、夕食の「炭酸泉湯豆腐食べ比べ」。同じ小坂町にある濁河(にごりご)温泉ひめしゃがの湯と泉岳舘の湯の2種類の炭酸泉を使った食べ比べ鍋だ。同じ町の炭酸泉なのに色も違うし、味も食感もまったく違う。まろやかな食感と食材の風味そのものを楽しみたいなら泉岳舘、甘みやコクをプラスしたいならひめしゃがの湯。具材によってどちらが好みか、ああだこうだと食べ比べるのがすごく楽しい。具材も、高山特産のジャンボなめこや飛騨アスパラガス、小坂産ぶなしめじ、飛騨産豚など、飛騨地方の食材がたくさん。
内からも外からも、楽しみながら温泉の素晴らしさを取り入れられるのが泉岳舘の魅力だ。
<プロフィル>
朝香。モデル・美肌温泉家。慶応大卒。温泉ソムリエアンバサダーなど数々の温泉資格を持ち、日本温泉気候物理医学会など多数の学会に所属。美容効果が期待できる温泉やその効能をより引き出す入浴法を広めようと日々活動している。自治体の観光PRの監修・アドバイザーなども務める。