取材に応じた脚本家の大石静さん
脚本家の大石静さんが9月30日、NHKの朝の情報番組「あさイチ」(総合月~金曜午前8時15分)にゲスト出演した。放送中の大河ドラマ「光る君へ」の脚本を9月下旬に書き終えたばかりという大石さんを生放送直後に直撃し、3年4カ月にわたる執筆期間やその直後の暮らしぶり、主人公のまひろ(のちの紫式部)を演じた吉高由里子さんや道長役の柄本佑さんへの思いなどを聞いた。
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◇3年4カ月の執筆期間「150人が待ってると思って力を振り絞った」
番組内で大石さんは「先週(9月下旬)ぐらいに最終回を書き上げました」と明かし、「もう疲れ果てて、(今は)燃え尽き症候群で」と話していた。
紫式部や平安時代の知識がなく不安だったが、「私を求めてくれるんだったら、やらなきゃ罰が当たると思って引き受けた」という。
執筆期間は準備も含めて3年4カ月に及んだ。その間、2022年12月に夫を亡くし、前後3カ月間ほど「まったく書けない時期」があったため、復帰後は「遅れを取り戻さなければならず、まったく1日も休まなかった」そうだ。
「体力はそんなにある方ではない」という大石さんが、根を詰められたのは「気力だけ」だった。
その気力の源は「仲間がいたからです。それと、これを良い作品にして多くの人に見ていただきたいという目標があったから」と言い切る。
「台の本で台本、脚の本で脚本。土“台”がしっかりしていないとちゃんとした家は建たないし、“脚”がしっかりしていないとシャキッと立てない。台の部分と脚の部分を私が担っていて、それをスタッフ、キャスト150人が待ってると思ったら、疲れていても気力は出る。出さざるを得ないでしょう」
◇朝晩、仏壇に手を合わせ
「お酒が好き」という大石さん。「でも、お酒を飲んでしまうと書けないので、この3年4カ月はほとんどお酒飲まなかったですね」と振り返る。
執筆を終えてから、「このごろは毎日飲んでます。ビール以外は何でも飲みます。日本酒とワインが好きなんですが、他のものでも何でも飲みますね」といい、肴(さかな)は「そのへんにあるもので。夫が亡くなって一人ぼっちですから、そんなに凝ったことはしていないです」と話す。
普段は昼夜逆転の夜型の生活を送る。そんな大石さんに1日のルーティンを尋ねると、「ルーティンは、今までなかったのですが、一昨年に夫を亡くしてからは、朝晩に仏壇に手を合わせています」といい、「自分が食べる朝ごはんと同じものをお供えするようにしています」と明かす。
◇吉高由里子と柄本佑は「びっくりするぐらい相性がいい」
番組内で大石さんは、「光る君へ」の中で「思い描いていたものを超えてきた印象的なシーン」の一つとしてまひろと道長が廃邸で初めて結ばれた場面(第10回)を挙げた。
中でもまひろが「人は幸せでも泣くし、悲しくても泣くのよ」といい、道長に「これはどっちだ」と聞かれ、「どっちも。幸せで悲しい」と答えた場面は印象に残っているという。
大石さんは「『幸せで悲しい』という吉高さんの複雑な表情、乱れた襟元、終わった後のやや覚めた感じの道長もリアルだった」と絶賛する。
大石さんは、2020年に放送されたドラマ「知らなくていいコト」(日本テレビ系)で吉高さんと柄本さんの2人を主軸にした脚本を手がけた。その頃から2人は「びっくりするぐらい役者同志としての相性がいい」と感じていた。
「2人共、いつも機嫌が良くて、本当に穏やかなので、チームの雰囲気もとても良いのだと思います」と現場での様子を語る。
吉高さんについては「これまでも上手な女優さんではあったけれど、今回、さらに成長されたと思います。まひろの奥深い思いを見事に表現してますから」といい、「まひろみたいに気難しいヒロインはなかなかいないので(演じるのは)難しいと思うんですが、不機嫌な顔が魅力的なところはすごいですね」とたたえる。
一方、柄本さんは「見る人の心に沁(し)みるあの色気は天が与えた才能ですね。それだけでなく、歩き方や眼差しなどすごく研究されていると思うんです」と顔をほころばせる。
最後に、「30代の女性へ向けてメッセージを」と求めると、「そういうのは偉そうなので嫌なんですが……」と前置きした上で、「30代後半から55歳ぐらいまでが女性の人生の中で一番華やかな期間だと思うんです。仕事においてもプライベートでも。だから、これからいい時期が来るじゃない、うらやましいな」と笑った。
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