俳優の石田ひかりさんが、草笛光子さん主演の映画「アンジーのBARで逢いましょう」(松本動監督、公開中)に出演。約25年ぶりの共演となる草笛さんとの関係や、仕事に対する思いを聞いた。(前後編の前編)
◇「草笛さんが映画を撮る」と聞き逆オファー
映画は、突然町に現れ、いわくつきの物件でバーを開店した、自ら「お尋ね者」と名乗る白髪の女性(草笛さん)と町の人々との不思議な交流を描いた、ファンタジードラマ。石田さんは、バーの近所の美容院の客で、古い迷信にとらわれている梓を演じる。出演が決まったのは「実は逆オファーなんです」と明かす。
「『草笛さんの主演映画があるらしい』という情報をキャッチしまして、マネージャーに急いで動いてもらって。そうしたら、こんな面白い役が残っていて、本当にラッキーでした。出演シーンは少ないんですけれど、“何か”を信じているものがある人っていうのはこうなってしまうだろうなって。彼女は本当に良かれと思ってやっていますし、木村祐一さん(梓が信頼する行者を演じた)と一緒に楽しく演じることができました」
草笛さんとは1999年上演の舞台以来の共演。約25年ぶりとなる。
「舞台の後の数年間は、お互いの自宅を行き来するなど交流させていただいて、私が結婚したときにもすてきな大きな鏡を送ってくださいました。今回、本当に久しぶりにお会いしました。私にとって草笛さんは背中を追いかけてきた、憧れの大先輩ですけれど、でも実際はとっても気さくで、ますますお元気になられてたかもしれないなって思うぐらいでした」
撮影現場では、大いに影響を受けた。
「90歳の方(2023年冬の撮影当時)の現場にご一緒させていただくっていうことはめったにありませんので、やはりこんなにお元気で現場に立っていらっしゃるその姿は絶対に目に焼き付けておかなければと思いました。撮影が夏でちょっと遠い場所での撮影だったので体調の面など心配もありましたが、草笛さんは毎日お元気に現場にいらっしゃって、その姿に感動しました。
“往年のスター”という表現もありますが、草笛さんは住み込みのお手伝いさんがいらっしゃるとか、ご自宅に立派な稽古(けいこ)場があって『ここで私毎日ストレッチしてるのよ』と、俳優なら誰もが憧れる芝居のことをいつでも考えていられる環境をお持ちで。パーソナルトレーニングを受けているともおっしゃっていて、そういった努力の積み重ねが、主演作が続いていらっしゃる今に繋がっているんだなって説得力が違いますよね」
◇初めはつらいことも多かった俳優業 90歳まで続けるためには「やっぱり健康」
石田さんは15歳でデビューした。結婚や出産を経験し、仕事に対する考え方に変化はあったのだろうか。
「始めたばかりのときは、“やらされてる感”しかなかったですね。『どうしてこんなことしなきゃいけないんだろう』『嫌だな嫌だな』っていうことと『楽しいな』って思うことが交互にあるような感じで。今思うと、つらいことのほうが初めは多かったですね。
そこからだんだん芝居というものに対してやりがいを感じられるようになってきました。街中で『あの作品見ました』とか声をかけてもらえるようになって、本当にたくさんの方が見てくださってるんだな、応援してもらっているんだなっていうことがちゃんと分かるようになったんです。
時には、上から下までジロジロ見られたり、一度通り過ぎた人が戻ってきたり、写真を撮られちゃったりということは今でもありますけど、皆さんのおかげでこの“石田ひかり”っていう名前を大きくしていただいたと実感できて、周りの方の存在っていうのより濃く感じるようになりました。だからこそ、やっぱり一つ一つの仕事に私も責任を持って役割をきちんと果たさなきゃいけないっていう自覚は芽生えました」
役者としての信念で一番大切なことは「感謝」だという。
「やっぱり私を思い出してくださったっていう感謝の気持ちですね。ここ何年も、手元に台本がないっていうことがあんまりないんですね。それって本当に恵まれていると思うんです。次の台本を読む暇もないっていうことも少なくなくて、そういう状況にやっぱり感謝して、オファーしてくださった方の思いには全力で応えなきゃいけないと思っています」
石田さんは現在52歳。「草笛さんに『あなたもすぐ90になるのよ』と言われました」と明かす。
「そのセリフって、草笛さんしか言えないじゃないですか。『あと40年あります』って答えたんですけど、90歳になっても草笛さんのように、現場に立っていたいです。草笛さんを見ていて、90歳になるのが本当に楽しみになりました」
そのためには「やっぱり健康が大事」だという。
「ちゃんと筋トレして、脳トレして。俳優である私達は呼んでいただかないと現場にたどり着けないですから、皆さんが思い出してくれる存在で居られるよう、努力は続けていかなきゃいけないと思います。与えられた仕事を精いっぱい、心を込めて丁寧にやっていくことが、その先の90歳とか100歳に繋がっていくと思います」
<プロフィル>
いしだ・ひかり 1972年5月25日生まれ、東京都出身。1986年、俳優デビュー。その後、映画「ふたり」、NHK連続テレビ小説「ひらり」、フジテレビ系ドラマ「あすなろ白書」などで主演を務める。ドラマ、映画、舞台、YouTubeなど、活動の場を限定することなく幅広い分野で活躍。2025年は「アンジーのBARで逢いましょう」(松本動監督、公開中)のほか、「リライト」(松居大悟監督、6月13日公開)、「ルノワール」(早川千絵監督、6月20日公開)と出演作の公開を多数控える。