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俳優の蒼井優さんが声優を務める、上映中の映画「それいけ!アンパンマン チャポンのヒーロー!」。演じたのは、アンパンマンに憧れ、ヒーローを夢見る元気な男の子・チャポン。現在は2歳の子どもを育てる母親でもあり、かつての仕事中心の生活から「子どもが最優先」の生活へと変わった。子育てと仕事の間で「ずっと揺らいでいる」と明かす蒼井さんに、今の思いや映画について話を聞いた。
◇母になり考え方も生活も一変 揺れる心を支えるのは「ママたち」
日本映画のトップランナーの一人として、10代のころから活躍してきた蒼井さん。「母親になるまでは、24時間すべてを作品に注いできました。でも今は、どんなときも最優先は子ども」と考え方も生活の優先順位も大きく変化した。
「子どもがまだ小さいので、仕事の際は『この時間帯でお願いできるのであれば』と相談しながら進めています。でも以前は『このシーンは寝不足の方が演じやすいかな』と思えば、ひと晩寝ずに撮影に行くこともありました。
だからこそ、今は仕事も子育ても『ちゃんとできているのだろうか』と思いますし、仕事をしようとすること自体が、わがままなのかなと考えてしまうときもあります」
そんな日々の揺らぎを支えてくれるのは、同じように子育てをしている「母親たち」の存在。
「専業主婦のママからも、働くママからも、本当にたくさんの力をもらっています。たとえば、周りの働くママに対して『わがまま』なんてまったく思わないですよね。そういう気づきからも励まされますし、ママ友だけでなく、街ですれ違った見ず知らずのママの姿を見て『私も頑張ります』って勇気づけられることもあります。
子育てにも仕事にも、心はずっと揺らいでいます。でも揺らいでいる場合じゃないと思いますし、みんなが頑張っているということに、力をもらっていますね」
◇子どもはアンパンマンの世界に夢中 「バレないように」演じた
映画では、空から落ちてきた不思議な男の子・チャポンがアンパンマンを兄のように慕い、ヒーローになることを夢見る。しかし、チャポンの出生にはある秘密があって……という物語。蒼井さんはチャポンの声を演じた。
「チャポンは明るくて、元気な男の子。普段の作品では、あまりやることのないテンションのキャラクターですが、楽しもうと思って練習を重ねました。子どもにバレたくなかったので、家では“子どものいないすきに”練習して、子どもが知っている私の声にならないよう、気をつけて演じました。
子どもはアンパンマンの世界が本当に大好きなので、その世界を大切にしたいんです。『お母さんが頑張って高い声を出してチャポンを演じている』と思わせたら、かわいそうかなって」
自身が声優を務めたことは「大きくなるまで伏せておこうかな」と考えている。
「子どものお友達も、みんなが観に行ってくれるそうなので、バレないといいなと思っています(笑)。映画を観に行った子どもたちには来場者特典でマラカスがもらえるそうなので、それを持って一緒に楽しみたいですね」
◇頼れる人たちが「私のヒーロー」 周囲の力も借りて子育て中
「どれだけ感謝の気持ちを伝えても足りないくらい。子どもが生まれてからは、夫をはじめ、産婦人科の先生や助産師さん、小児科の先生、親切にしてくれたお店の人、習いごとの先生……子どもの命を守ってくれている人たちが、私のヒーローです」
そう語る蒼井さんだが、かつては周囲の人と距離のある生活をしていたという。
「独身の時は、自分を守ることにすごく一生懸命でした。大変な世界に足を踏み入れてしまったという思いもあって、ものすごく防御して、バリアを何重にも張っているような生活だったんだと気づきました」
その生活は母親になって変化し、今は周囲の力も借りて子育てをしている。
「地域のみんなに育ててもらわないと、子どもを育てることはできないんだと実感しました。いまは同じマンションの中で赤ちゃんを預かりあったり、子どもと一緒に近所の人にあいさつをしたり。みんなに成長を見守ってもらうという感じ。
自分が子どものころと似ていますね。そうしようと思って始めたわけじゃなくて、気づいたら私の母がしていた子育てと同じ環境だなって最近気づきました」
◇「子どもより、まず親が」 大人にも届くアンパンマンのメッセージ
劇中では、ばいきんまんがチャポンに「思い出すんだ! お前がなんのために生まれてきたか」と言い放つシーンがある。「なんのために生まれたのか」という問いは、原作者・やなせたかしさんの原点とも言えるテーマの一つ。お子さんに「私ってなんのために生まれてきたの?」と聞かれたら、どう答えるかと聞くと……。
「『幸せになるため』と答えます。もしかして命を授けることは親のエゴなのかもしれない。でも、生まれたからには幸せになってほしい。それ以外のことは考えなくていいと伝えたいですね。生きていてくれるだけでいいし、私たちが幸せにする。それが命を授けた私たちの、子どもへの最低限の恩返しだと思います」
同作について「子どもたちが勇気をもらって歩みを進められる作品」としつつ、蒼井さんは「もしかしたら、大人向けの映画かもしれない」と言う。
「子どもより先にまず親が、ということが大切だと思います。『なんのために生まれてきたのか』というテーマに、お父さん、お母さんや大人たちも目を向けて、子どもたちのために『私たちがヒーローになろう』と愛と勇気を受け取っていただければ。出生の秘密を知ったチャポンに、アンパンマンがかける言葉が、本当に素晴らしいです。世界中の人に見ていただきたい作品ですね」
<プロフィール>
あおい・ゆう 1985年8月17日生まれ。福岡県出身。1999年、ミュージカル「アニー」でデビュー。2001年、「リリイ・シュシュのすべて」で映画デビューした。2006年の「フラガール」、2017年の「彼女がその名を知らない鳥たち」で数々の映画賞を受賞。2019年6月にお笑いコンビ「南海キャンディーズ」の山里亮太さんと結婚。2022年8月に第1子を出産したことを発表した。