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エンディングノート:オトナ女子向け終活本が話題

 いつか来る人生の終わりに備え、自分のことや大切な人へのメッセージなどを記しておくエンディングノート。これまで高齢者向けの印象が強かった分野だが、11年の東日本大震災をきっかけに、30~40代の“オトナ女子”向けの「Never Ending Note~未来に残すエンディングノート~」(集英社)が企画され、昨秋発売された。すぐに重版がかかるほど、売り上げは好調で、同エンディングノートを使ったセミナーが半年の間に3回開催された。同書を手がけた同社女性誌企画編集部の田川久美さんに、制作の背景や人気の理由、その活用術などを聞いた。(毎日新聞デジタル)

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 ◇1400人の女性の声から誕生 

 同編集部は、11年5月に「未来に残すエンディングノート編集委員会」を発足。東日本大震災で「平和な日常も、何かが起きて、明日にはなくなってしまうかもしれない」という状況を目の当たりにし、万が一のときに備えて誰かに大事なことを託すためのツールが必要だと考えてのことだった。フェイスブックページを立ち上げ、「いつ何が起こるかわからない今、あなたは未来に何を残しておきたいですか」と問いかけて、一般女性にエンディングノートへの意見を聞くと、約1400人の女性から「重い暗いノートではなく、明るいノートにしたい」「愛されて幸せだったこと、一生懸命頑張っていたことを、ちゃんと書いておきたい」などの意見が届いた。その後、意見を寄せた女性たちの一部と編集者が会議を行って制作した。

 編集部のメンバーは全員女性で、「non-no(ノンノ)」をはじめとする同社の女性誌で編集長や副編集長を務めた女性誌のプロ集団。だからこそ、徹底した女性目線でのビジュアルや使い勝手のよさも追求しており、田川さんは「レイアウトは女の子魂がつまってますね。持っているだけで楽しくなるノートにしたかったので。それから、シングルの人、結婚して子供がいる人、離婚している人……など、現代は女性の生き方もさまざまなので、年齢や状況を限定しない内容にすることを心がけました。家系図のページでは、大概が自分と配偶者を書き込む欄があるのですが、このノートでは両親と祖父母以外はフリースペースにしたり」と細部へのこだわりを明かした。

 ◇自分の人生を楽しく書き込む

 完成したエンディングノートは、医療や葬儀に関する項目に加えて、半分以上が「私の宝物」や「旅の記憶」「自慢のレシピ」など自分の人生を自由に楽しく書き込めるアルバムのような構成になっている。女心をくすぐる淡いピンク色の表紙には「あれこれ楽しく、遺言状を書こう。若いからこそ。」という作家の林真理子さんの推薦文が踊る。

 ほかに自分の好きな音楽や映画、ファッションなどを書き込む「私のお気に入り」、自由にテーマを決めて人生のベスト10を挙げる「私のベスト10」など、全40項目からなる「まるごと自分記録ノート」に仕上がっている。「ドリルみたいに項目を文字で埋めていくのはイヤ」という声を反映し、フリースペースを充実させた。写真やイラスト、手紙を貼るなど自分流にページをアレンジでき、著名なイラストレーターやモデルが自由にスクラップしたおしゃれでオリジナリティー豊かなページが参考例として掲載されている。

 ◇今後の人生もプランニングできる

 同書の大きな特長は「人生の“終活”だけではなく、今後の人生もプランニングできる」こと。「自分年表」では、これまで生きた年齢までの歩みをつづるだけではなく、「再会したい人」「暮らしたい街」などを書き込めるほか、「これからやりたいことリスト」を書くページもある。年表は100歳分まであり、未来のプランを書き込むことも自由だ。田川さんは「自分のこれまでを書くと、これからが見えてくる。思い出を再編集することで、人生をよりよく生きるためのノートにもなっていますね」といい、例として、年表に家族の未来の年齢も記入して「この年には、夫と子供はこの年齢だから、一緒にここへ旅したい……など将来への願望を書いている方もいらっしゃいます」と語る。

 ◇コミュニケーションツールの役割も

 昨秋、同書が出版されると、従来とは異なる新しいタイプのエンディングノートとあって、あっという間に話題となり、テレビや雑誌、新聞、ラジオなどこれまで約30の媒体で取り上げられた。すぐに重版がかかるほどで、想定していた30~40代以外の幅広い女性層からも支持を受け、「自分と母の分を買った」という20代女性や、「こういうかわいいエンディングノートがほしかった」という70~80代の女性の声も聞かれたという。

 そして、同書はさらなる広がりを見せ、同書を使ったセミナーが半年で3回開催された。自身のエンディングノートを公開しているアーティストらの指南のもと、参加者が自由に同書に書き込んでいくという内容だ。夫婦や親子での参加も多く、「『これからやりたいことリスト』で一致したものから順に2人で実行していこうというご夫婦や、ノートをママにもプレゼントして、お互いが書いたものを見せ合う娘さんなど、家族間のコミュニケーションツールにもなっています。タイトルに『“Never” Ending Note』とつけたように、エンディングだけでなく、自分自身や未来について考えたり、人とのつながりを実感できたりと、思いをつないでいくツールとして進化していってるところが面白いですね」と田川さん。

 一方、さっそく「男性用も作ってほしい」という要望も寄せられているという。その声を受け、田川さんは「男性向けはもちろん、いろんな形でエンディングノートを発展させていきたいですね」と今後を語り、新たな展開を視野に入れていた。「Never Ending Note~未来に残すエンディングノート~」はA5判、144ページ。1575円。

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