「箱入り息子の恋」の一場面 (C)2013「箱入り息子の恋」製作委員会
35歳独身男の初めての恋物語「箱入り息子の恋」(市井昌秀監督)が公開中だ。音楽だけでなく、俳優や文筆家としても活躍する星野源さんが映画初主演を果たした。透明感あふれるヒロインを演じるのは、「天然コケッコー」(07年)などで知られる夏帆さん。ただの恋愛ものではなく、親の子への思いもこもった多面的な人間ドラマに仕上がっている。
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天雫健太郎(星野さん)は市役所でコツコツと働いてきた。両親と同居し、ペットのカエルをめで、ゲームをすることが楽しみな35歳。彼女いない歴35年だ。将来を心配した父(平泉成さん)と母(森山良子さん)は、代理お見合いに出かける。そして、裕福な今井家の箱入り娘・奈穂子(夏帆さん)とお見合いすることになった。お見合いの席で、今井家の父親(大杉漣さん)は、視覚障害を持つ奈穂子を大切に思うあまりに、健太郎を受け入れられない。しかし、すでに健太郎は可憐(かれん)な奈穂子に心を奪われていた。なんとかしてあげたいと思った今井家の母親(黒木瞳さん)は、夫に内緒で健太郎と奈穂子との交際のお膳立てをする……という展開。
傷つくのが怖くて人との接触を避けて、自分を守って生きてきた主人公の健太郎。映画は静けさの中に鬱屈としたものを包含しながら進み、健太郎の感情の高まりを伴って盛り上がりを見せていく。健太郎の前には壁だらけだ。恋が彼を奮い立たせるが、その姿は無様だ。だが、カッコよく見えてくる。恋とは傷だらけになって相手の心に触れることだと改めて思わせる。
一方、この映画は結婚適齢期の子を持つ親の姿もリアルに映し出している。子どもと一生、一緒にはいてあげられない。親の愛は過保護で独善的で、その結果、子の幸せを阻んでしまうこともあるのだが、それも親心というもの。両家の両親役のベテラン俳優陣がさすがの演技を見せる。テアトル新宿(東京都新宿区)、ヒューマントラスト有楽町(東京都千代田区)ほか全国で公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに単館映画館通いの20代を思い出し、趣味の映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心に活動するライター業のほか、ときどき保育士としてとぼとぼ歩き中。
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