「さよなら渓谷」の一場面 (C)2013「さよなら渓谷」製作委員会
「横道世之介」や「悪人」、「パレード」など、自身の作品の映画化が続いている吉田修一さんの同名小説を真木よう子さん主演で映画化した「さよなら渓谷」が22日から公開される。緑豊かな渓谷で起きた幼児殺害事件を発端に、とある夫婦の秘められた関係が浮かび上がるミステリー仕立てのヒューマン作だ。大西信満さん、大森南朋さん、鈴木杏さんらも出演。「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」(09年)や「まほろ駅前多田便利軒」(11年)の大森立嗣監督がメガホンをとった。
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都会から離れた緑豊かな渓谷で暮らしている尾崎俊介(大西さん)とかなこ(真木さん)の夫婦。隣家の女性が、実の子供を殺したと逮捕される。それまで群がっていた報道陣は、その一報を受け引いていくが、週刊誌記者の渡辺(大森さん)だけは、俊介とかなこの、世間に背を向けたような暮らしぶりに違和感を感じていた。そんな中、俊介に幼児殺人の共犯の疑いがかかる。通報したのはかなこだった……という展開。
かなこと俊介を取り囲む、ねっとりとした空気。しかし2人の間には、どこかよそよそしい、渓谷に吹く風のような乾いた空気が流れている。実は、かなこと俊介の間には、常人には推しはかれない感情が渦巻いていた。その要因を知った上で今作を見るのは“あり”だが、ここではあえて伏せておきたい。意外性はもちろん、2人の感情を物語を見ながら一緒に探ってほしいからだ。そのためにも真木さんの、微妙な表情の変化や小さな仕草に注目してほしい。それにはやはり大きなスクリーンが効果的だろう。なお、真木さんが歌うエンディング曲「幸先坂」は、椎名林檎さんによる書き下ろし曲。ほかに、井浦新さん、新井浩文さん、鶴田真由さんらが出演。22日から有楽町スバル座(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌の編集、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。先日、近所のスーパー銭湯に初めて行った。湯につかり、ご飯を食べ、また湯につかり……。思いのほかゆっくりできた。また行こうと思う。
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