北京を拠点に中国のドラマや映画に出演している日本人の女優がいる。井上朋子さんは中国で芸能活動をしている数少ない日本人の一人で、06年から現在に至るまでモデルや女優として中国で活躍の場を広げている。「結果的に中国が私に合っていた」という井上さんに、なぜ中国で仕事をするのか、中国の魅力、同年代の中国人女性の間ではやっていることなど、井上さんと中国の“今”について聞いた。(毎日新聞デジタル)
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◇興味のきっかけは「発音が可愛かったから」
井上さんは1980年生まれの33歳。06年から中国でモデルや女優として活躍し、日本のNHK大河ドラマにあたる国営放送のドラマで重要キャストにも抜てきされるなど、中国で着実に女優としてのキャリアを積んでいる。中国語も使いこなし、精力的に仕事をこなす井上さんだが、意外にも中国に興味を持ったのは大学卒業後、たまたま中国映画を見たことがきっかけだったという。井上さんは「中国人の女性が話す言葉の響きが可愛かったから。自分もこの音を出したいと思いました」と笑顔で答える。
実は、井上さんは高校時代は英語コースに在籍し、卒業後はロンドンに留学。帰国してからは専門学校に通い、字幕翻訳者を目指すという“英語一直線”の生活を送っていた。それだけに、もともと外国語には興味があったという。中国へはよく遊びに行っていたという井上さんだが、日本と中国を何度か行き来するうちに中国に住むことを決意。1年くらい留学して帰国する予定だったが、知り合いの紹介で雑誌のモデルの仕事が入ったことが発端で、仕事の幅が広がり「もうちょっと頑張ろう」と思っているうちに今に至った。
◇苦労したことは「言葉」
井上さんが中国に行って一番苦労したことは言葉だった。井上さんがドラマや映画の仕事をするようになったのは、中国にわたって1年半ほどたってからというが、日常会話に不自由することはなくなっても、井上さんが出演する作品は歴史ものが多かったため、「出てくる単語が日常で使わないものばかり。爆薬を仕掛けるとか……」と笑う。さらに、演じるのはスパイなど日本人が悪く描かれているような役が多いというが、演じること自体は楽しいと言い切る。「中国語を話していることや外国で働いていることが楽しい。外国にいる自分が好きなんです」と話す。「日本にいるときは周りの目を気にしてしまうけれど、中国でははっきりと言わないと伝わらないし、何か言ってもそれを批判されることはないので気が楽。結果的に中国の方が私に合っていたのかなと思いますね」と振り返った。
◇ワイン感覚でお茶を堪能
現在は北京で暮らすという井上さんだが、同世代のアラサー女性とは日本と同じように恋愛や化粧品などについて“ガールズトーク”に花が咲くという。美白ブームで肌を少しでも白くしようと努力したり、目を少しでも大きく見せようとするところは日中共通という。井上さん自身は「日本で何がはやっているのか」ということをよく聞かれるといい、日本のはやりものが中国の雑誌で特集されることもあるという。中には日本の美容製品をインターネット通販で取り寄せる人もいるそうで、中国人女性は美やはやりものに対してはとても敏感だという。
中国茶にも注目しており、油を使った料理が多い中国料理にウーロン茶は必須で、プーアル茶もダイエット効果があってよく飲むという。食前にも菊花茶という“食前茶”を飲むといい、まるでワインを飲むように中国茶を楽しんでいるという。
今後も中国で仕事をしていきたいという井上さんに、今後の抱負を聞くと「出演する作品は歴史ものが多いんですが、現代のドラマにも出てみたいですね。また、中国語が話せるのを生かして、いつか日中合作の作品で字幕翻訳をしたり、出演したいです」と目を輝かせた。
<プロフィル>
いのうえ・ともこ 1980年1月28日生まれ。NHKドラマや映画、CMなどに出演。06年に中国に渡りモデルや女優として活躍中。ドラマ「夜幕下的哈爾濱」(08年)、映画「宅男総動員」(10年)など中国のドラマや映画に多数出演している。
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