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注目映画紹介:「最愛の大地」 アンジ−が脚本・監督 ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争が題材

 アンジェリーナ・ジョリーさんが自ら脚本を書き、長編初監督作として臨んだ「最愛の大地」が10日に公開された。ジョリーさんが今回、題材に選んだのは、第二次世界大戦以降、欧州で最も悲惨な争いとなったボスニア・ヘルツェゴビナ紛争。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の親善大使を長く務めてきたジョリーさんだからこそできたテーマだ。

 1992年のボスニア。セルビア系ボスニア人の警官ダニエルと、ムスリム系ボスニア人の画家アイラは恋人同士。今日も姉レイラに送り出され、アイラはダニエルとバーにやって来た。ところがそのとき紛争が勃発。2人はいきなり互いが敵同士という立場に置かれてしまう…。

 捕虜となったアイラをダニエルが見つけ、彼女を救おうと手を差し伸べる。2人が愛し合い、攻撃はこれからますますひどくなるとダニエルからいわれたとき、アイラはつぶやく、「皆殺しされるほど、私たちは悪なの?」と。この言葉が胸に突き刺さる。映画は苦い幕切れを用意しているが、紛争や戦争が起きた土地を訪れ、そこで蹂躙(じゅうりん)された人々の叫びや悲しみを見てきたジョリーさんにとって、安易なハッピーエンドはありえなかったのだろう。紛争は終わりを告げたものの、集団虐殺や性暴力などの民族浄化、さらには大量の国内難民を生み、いまだ悲しみを引きずる人々がいる。映画は私たちに、そのことを改めて気づかせる。

 アイラ役のザーナ・マリアノビッチさんも、ダニエル役のゴラン・コスティックさんも、レイラ役のバネッサ・グロッジョさんもサラエボで生まれている。そうしたキャスティングがまた、今作を特別な映画にしている。10日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

 <プロフィル>

 りん・たいこ=教育雑誌の制作会社、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。

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