(C)ベニシア四季の庭製作委員会2013
NHKのEテレの番組「猫のしっぽカエルの手 京都大原ベニシアの手づくり暮らし」でその暮らしぶりが紹介されている京都・大原の古民家に住む英国人女性、ベニシア・スタンリー・スミスさんのドキュメンタリー作品「ベニシアさんの四季の庭」(菅原和彦監督)が全国で順次公開中だ。美しい四季とともにすてきな手づくり生活を紹介しながら、結婚と離婚、娘の病気、さまざまな困難があったことも語られていく……。
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庭に咲く100種類以上のハーブで料理や掃除をするベニシアさんは、英国貴族の家系に生まれたが、社交界に疑問を持ち、19歳のときにインドへと旅立った。そして立ち寄った日本に定住し、英国の伝統の暮らしと日本人の昔ながらの知恵を生かしながら、夫と娘と孫、地域の人たちと日々を過ごしている。一見優雅に見えるが、これまでさまざまな苦労があった……というベニシアさんの生活を追ったドキュメンタリー作。
この映画を見ていると、なんとも落ち着く。植物が咲き乱れる庭。畳をほうきではき、畳職人に手入れをしてもらう。近所のおばあちゃんから習ったシソジュースを作ってみる。四季折々の大自然がスクリーンいっぱいにあふれるだけで、日本はぜいたくな国だなあと感じる。四季と調和するベニシアさんの暮らしぶりはステキだが、大自然がときどき牙をむくように、人生もきれいごとだけでは済まないようだ。ベニシアさんは「困難は受け入れるしかない」「許しとは過去を手放すこと」と語る。今作は、そんな含蓄あるベニシアさん語録も魅力だ。人生を俯瞰(ふかん)しながら淡々と語る姿はなんともしなやかで強い。
注目したいのは、ベニシアさんがインドに憧れて、東へ東へとやって来たことだ。ジョン・レノンが東洋に傾倒してインドに滞在したのも同じ時代だった。つまり、ベニシアさんはその時代の若者の一人だったのだ。幾多の困難を乗り越え、やっと自分らしい生活を手に入れて、今がある。人生の果実を摘み取った本物の喜びが、この映画に満ちあふれている。14日からシネスイッチ銀座(東京都中央区)ほか全国で順次公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出し、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。
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