女優の市川実和子さんが出演する舞台「シダの群れ3 港の女歌手編」が、11月6日から東京・渋谷のBunkamuraシアターコクーンで上演される。岩松了さんが脚本・演出を手がける人気任侠(にんきょう)シリーズの第3弾で、市川さんは前作に続いて2回目の出演。市川さんは、岩松作品の魅力について「白黒はっきりしたものではなく、人間の表裏が描かれたグレーな物語。難しい部分や分からないこともあるかもしれないけれど、見終わった後に私はいつも何かが動かされる」と語る。市川さんに役柄や本作の見どころ、共演者とのエピソードを聞いた。(毎日新聞デジタル)
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今作では、第1弾で阿部サダヲさんが演じた暴力団「志波組」の下っ端のチンピラ・森本が再び主人公として帰ってくる。同組から逃れ、ある港町にたどり着いた森本は、同地を仕切っている「都築組」の若造たちに囲まれる。その窮地を救ったのは、市川さん演じるヨシエ。彼女に待つようにいわれて入った港町一番のクラブ「スワン」にいたのは、歌手として羽ばたきたいという夢を持っている女歌手のジーナ(小泉今日子さん)とマネジャーの山室(吹越満さん)。そして同店で、客の都築組の若頭・結城(小林薫さん)に出会った森本は、彼に利用され、次第に暴力団の抗争に巻き込まれていく……という展開。
市川さんが演じるヨシエは、第2弾で看護師でヤクザの女だったが、本作は看護師をやめて「スワン」で働き始める。前作から続けて唯一登場する人物で、市川さんは「その分、2作目の橋渡しというか、そのにおいを感じさせる役柄になるのではないかと思います」と語る。人物像については「任侠の世界に魅力を感じている一風変わった女性。前作でのヨシエは好きな人に対していちずなんですけど、いろんな人にも色目を使うという二面性がありました」と苦笑する。しかし一方で「でも人間って矛盾の中で生きていると思うんです」と理解を示す。
他の登場人物たちについても「ちょっとみんなおかしいんですよ。岩松作品の中に出てくる人たちって、全員が矛盾を抱えているんです。みんなグレーの世界で息をしている」といい、彼らが登場する物語を「たとえば世間一般のことでいうと、殺人はいけないことなのに、戦争になると正当化されてしまう現実がある。そういう正義ではない矛盾の世界を岩松さんはこれまでの作品でも多く描いていて。難しい部分や分からないこともあるかもしれないけれど、私としては見終わった後にいつも何かが動かされる。一言では表現できないのですが、今回もそういう人間らしい部分を切り取った作品になると思います」と見どころを語る。
そして、豪華キャストと共演。ドラマ「私立探偵 濱マイク」(日本テレビ系)をはじめ、さまざまな作品で共演している主演の阿部さんについては「昔から変わらず鋭いナイフのような人」と評し、「普段は優しい人ですが、とんがっているものが阿部さんの中にはある。だから、あんなに鋭い演技ができるのではないかと思います」と分析。また、小泉さんに対しては「同じドラマに出たことはあるんですが、共演するのは初めて。でもプライベートでは昔からよくお会いしていて。普段からよくしていただいているので、お仕事ができてすごくうれしい。本当に包容力があって、スターなのに驚くぐらい普通の感覚を持っている人。どうしてその感覚を持っていられるんだろうって思うくらい美しい人なんです」と絶賛する。
現在、けいこの真っ最中。魅力的なキャストがそろった現場は「すごく熱い」という。「前作でもそうでしたが、岩松作品は分かりづらいけれど、すごくいい作品だというのはみんな分かっている。その分、自分たちがちゃんと演じないという気持ちが強い。だから前作では、毎晩みんなで飲みに行って語り合っていましたね」といい、「昨日もけいこ後、薫さんの呼びかけで、キャストたちと食事行きました。若い俳優もたくさんいるんですが、彼らには発破をかけて。みんなで頑張ろうっていう空気が自然とあるんです」と意気は上がっているようだ。
次回は、市川さんの休日の過ごし方や、「今の小泉さんと同い年」にあたる10年後の理想像を聞く。
<プロフィル>
いちかわ・みわこ。1976年3月19日生まれ、東京都出身。「an・an」「CUTiE」などファッションモデルとして活躍後、2000年に映画「アナザヘヴン」で女優デビュー。その後、映画・テレビドラマ・舞台などを中心に活動。主な出演映画に「イン・ザ・プール」(05年)、「余命」(08年)、「八日目の蝉」(08年)、出演したテレビドラマに「ドン★キホーテ」(日本テレビ系)、「最高の離婚」(フジテレビ系)などがある。現在、ドラマ「ハクバノ王子サマ 純愛適齢期」(読売テレビ・日本テレビ系)に出演中で、11月16日から上演される舞台「シダの群れ3 港の女歌手編」に出演、11月22日から映画「すべては君に逢えたから」の公開を控えている。
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