女優の永作博美さんが主演する映画「四十九日のレシピ」(タナダユキ監督)が9日に公開される。映画は、亡くなった母親が残した「レシピ」を通じ、心に傷を抱える残された家族の再生を描く物語。永作さんは、不妊治療がうまくいかず、夫に不倫されて結婚生活が破綻してしまう主人公・百合子を演じる。「百合子がたくさんの思いを抱え、人に助けられながら乗り越えていく作品。何かを乗り越えられるヒントになれば」とアピールする永作さんに、役への思いや撮影エピソードなどを聞いた。(毎日新聞デジタル)
「四十九日のレシピ」は伊吹有喜さんのロングセラー小説が原作。母・乙美の突然の訃報に帰郷した百合子(永作さん)と父の良平(石橋蓮司さん)は、料理や掃除など、日々の家事にまつわる知恵が書き連ねられた母の「レシピ」を元に、少しずつ暮らしを立て直していく。そして「自分の四十九日には大宴会をしてほしい」という記述を見つけた父娘は、生前の希望をかなえるため、乙美の知り合いだった更生施設出身の少女・イモ(二階堂ふみさん)と日系ブラジル人の青年・ハル(岡田将生さん)と準備を始める。
夫の元を離れ、実家に戻ってふさぎ込む百合子だが、その人物像について永作さんは「非常に真面目で頑張り屋。でも、それがゆえにすごく抱え込んでしまって、なかなか抜け出せない……という印象」と語り、「いろんなことを背負っている人なので、リアリティーを持って演じるのは難しいなと思った」と明かす。
百合子を演じる上で、永作さんが努めたのは「彼女のダメな部分を表に出すこと」だった。「一般的にはいい人だとは思うんですが、百合子のかたくなさや人付き合いの不器用さ、しっかりしていそうなのに意外と決断ができなくて流されちゃう感じだとか。そういう部分をなるべく演じることで、役に立体感がつくのではと思いました」と語る。
さらに「キャストのみなさんに助けてもらった」といい、父を演じた石橋さんに対して「初めての共演だったんですが、違和感がなかった。素直に『お父さん』って呼べたし、怒れたし、すごく有意義なお芝居の時間でした」と振り返る。役の上では頑固で無口な昔ながらの“おやじ像”を演じた石橋さんだが、「普段は優しくてチャーミング。現場の雰囲気を引っ張るムードメーカーでした」と明かす。
また、二階堂さんと岡田さんを交えて「4人でおしゃべりしていることが多かった」と現場では映画さながらの仲むつまじさだったと語る。「二階堂さんは勉強家で気遣いのできる方。岡田さんは本当に素直な方。4人、年齢が全然違うんですが、本当に仲よしでした」と笑顔を見せる。
映画では、父やイモ、ハルとの交流を通じて、百合子の心が解きほぐされていくが、「小さいことや大きいこと、たくさんの思いを抱え、人に助けられながら乗り越えていく作品。何かを乗り越えられるヒントになれば……」と語る永作さん。「百合子は頑張りすぎてしまうあまり、そこに執着して視野が狭くなっているところがある。一度きりしかない人生、視点を変えてみることも大事。それには精神力も体力も必要だと思うんですが、人生はそうやって自分で切り開いていくもの」と表現し、「新しい道を決断することはすごく勇気がいることだけど、どれだけ決断したかで人生は変わる」とまっすぐな瞳でメッセージを送った。
次回は、2児の母である永作さんの日常生活や、10年後の未来像について話を聞く。
<プロフィル>
ながさく・ひろみ。1970年10月14日生まれ、茨城県出身。テレビドラマや舞台など、コメディーからシリアスまで幅広い作品に出演。おもな映画出演作に、「ドッペルゲンガー」(2003年)、「空中庭園」(05年)、「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」(07年)、「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」(10年)などがある。11年の「八日目の蝉」では第35回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞ほか、映画各賞を受賞した。11月9日に映画「四十九日のレシピ」が公開されるほか、待機作に14年冬公開予定の「さいはてにて−かけがえのない場所−」がある。