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注目映画紹介:「いとしきエブリデイ」 5年かけて撮られた父親不在の一家の絆

 「ひかりのまち」(1999年)や「マイティ・ハート 愛と絆」(2007年)などの作品で知られるマイケル・ウィンターボトム監督の「いとしきエブリデイ」が9日から全国で公開された。父親不在の一家を通じて、家族のありがたみ、時間の大切さがひしひしと伝わってくる感動作だ。

 カレン(シャーリー・ヘンダーソンさん)は、日中はスーパーで、夜はパブで働きながらステファニー、ロバート、ショーン、カトリーナの4人の子供を育てている。夫のイアン(ジョン・シムさん)は今、刑務所の中にいる。面会日には子供たちを連れ、列車に乗って会いに行く。大好きな父親に会えて子供たちは大喜び。しかし楽しい時間はあっという間に過ぎる。また次の面会日をカレンも子供たちもイアンも指折り数えて待つしかない……というストーリー。

 5年の歳月をかけて撮られた作品だという。なるほど、撮影当初8歳、6歳、4歳、3歳だった子供たちは、物語の終わりには5年分成長している。彼らの成長ぶりに違和感がなかったのは、実際に経過する時間の中で育まれたものだったからだ。子供たちの演技がとても自然であることにも目を見張った。それもまた、彼らがカークという姓の実の兄妹であり、実名で出演していることを知れば納得がいく。

 説明的なことは一切なし。季節がいつだとか、何年たったとか、イアンの罪状すら明確には示さない。ただ映像で見せていくのみ。しかしそれがじわじわと心にしみ込んでくる。それもこれも5年という時間を丹念に映像に刻み込んだからこそなしえたことであり、過去にドキュメンタリーを数多く手掛けてきたウィンターボトム監督だからこそなしえた作品だろう。

 うつろう日々の中、時にはすれ違い、時にはけんかをし、時には道を踏み外す者もいる。でもやっぱり家族は一緒がいい。彼らの未来に幸あれと願わずにはいられない幕切れと、マイケル・ナイマンさんのなじみやすい音楽のメロディーラインが深い余韻を残す。9日からヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほかで全国順次公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

 <プロフィル>

 りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。

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