「おじいちゃんの里帰り」の一場面 (C)2011-Concorde Films
トルコ系ドイツ人2世の女性監督と妹が、実体験を基に作り出した家族の物語「おじいちゃんの里帰り」(ヤセミン・サムデレリ監督)が公開中だ。国際的な映画賞で数々の賞を受賞し、ドイツで7カ月のロングランヒットを記録している。トルコからドイツに移住した男性の半生を、ユーモラスに振り返る。
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1960年代半ば、トルコからドイツに移り住んだイルマズ家の主フセイン(ベダット・エリンチンさん)も、今や70代のおじいちゃん。3世代の大家族となった。2人の息子は大人になっても相変わらず仲が悪い。6歳の孫は、ドイツ対トルコのサッカーの試合で友だちと大げんかしたり、大学生の孫娘は英国人の恋人との間に子どもができてしまったり、おじいちゃんの知らないところでそれぞれが悩みを抱えていた。そんなある日、フセインは「故郷の村に家を買ったので家族で行ってみよう」と提案する。気乗りのしない家族だったが、おんぼろバスで出発することに。故郷まで3000キロの旅路が始まった……という展開。
この家族の物語は「移民」をテーマに描かれている。空港からオンボロバスで里帰りする旅路の時間を使って、おじいちゃんが孫に優しく語りかける方法で半生がつづられていく。ドイツ政府に労働者として招かれて、言葉も分からずやって来たフセインの一家。文化も宗教も違う苦労の日々を、軽やかな笑いに包んで描写した。トルコ系移民の2世である姉妹が実体験をもとに着想しているので、体験した人にしか分からない細かいエピソードが出てくる。母親は買い物一つに、身ぶり手ぶりで四苦八苦。子どもたちは、十字架にはりつけのキリスト像に絶叫したかと思えば、クリスマスのイベントに引きつけられて、早速ドイツになじんでしまった。異国で頑張った昔のフセイン、そして孫との時間を過ごす現在のフセイン。たくましく生きる大黒柱を中心に、一家の中で変わるものと変わらないものがある中、受け継がれていく各世代の姿も描かれ、国を超えた感動が伝わってきた。11月30日からヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほか全国で公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。
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