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「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」の一場面
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「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」の一場面

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注目映画紹介:「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」 ジャームッシュ監督の異色吸血鬼映画

 米インディペンデント映画の巨匠ジム・ジャームッシュ監督の最新作「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」が公開中だ。今作は吸血鬼の物語で、何世紀もにわたる恋人同士の2人を、「マイティ・ソー」(2011年)や「アベンジャーズ」(12年)の悪役などで知られるトム・ヒドルストンさんと「ムーンライズ・キングダム」(12年)などのティルダ・スウィントンさんが、けだるい雰囲気を醸し出しながら演じている。そのほか、2人の生活をかき乱す問題の妹にミア・ワシコウスカさん、ジャームッシュ作品の常連ジョン・ハートさんも登場。吸血鬼の物語が、バイロンをはじめとする英国のロマン派詩人から生まれたことなどにちなみ、英国文学のネタもちりばめている。

 米デトロイトでさびれたアパートにすむ吸血鬼のアダム(ヒドルストンさん)は、アンダーグラウンドでカリスマ的人気を誇るミュージシャンでもある。姿を隠して何世紀もの間、生きてきたが、ある夜、同じ吸血鬼で永遠の恋人イヴ(スウィントンさん)から電話が入る。モロッコのタンジールに住んでいるイヴは、パリ経由で夜間の便を乗り継ぎ、アダムのところにやって来た。彼らが「ゾンビ」と呼ぶ人間の犯した蛮行を憂い、音楽の話をしたあと、2人でパッカード工場跡やジャック・ホワイトの生家をドライブして回る。楽しく2人で過ごしていたが、破天荒なイヴの妹エヴァ(ワシコウスカさん)が現れて……という展開。

 生身の人間の血を必要とする吸血鬼が21世紀に生きるには、なかなか楽じゃないようだ。昔のように死体は転がっていないし、人間にやたらかみつくわけにもいかない。血の供給先は病院だ。アート系のおしゃれな吸血鬼の彼らは、部屋でまったりと過ごしているように見えるが、内心は穏やかではないのかもしれない。デートで廃虚を訪れ、血液のアイスキャンディーをなめながら人間への皮肉を語る。アダムとイヴのように自分の好きな物に囲まれて、好きなことをすることが楽じゃないこの時代。安寧な生活はいつ中断されるか分からない。それは、イヴの妹のようなガサツな闖入者(ちんにゅうしゃ)かもしれないし、手に入らない血液への渇望なのかもしれない。モロッコ・タンジールでのシーンは、レバノン人の女性シンガー・ヤスミンの歌声に酔わされる。いつの時代も音楽は人間の心を潤してくれ、アダムとイヴもヤスミンの声に酔いしれるが……。その後の決断の瞬間は見応えあり。20日からTOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほか全国で公開中。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。

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