夏川草介さんのベストセラー小説が原作で、2011年公開された「神様のカルテ」。その続編「神様のカルテ2」が全国で公開中だ。前作に引き続き、主人公の内科医役に人気グループ「嵐」の櫻井翔さん、その妻役に宮崎あおいさんが扮(ふん)し、もう一組の夫婦を藤原竜也さんと吹石一恵さんが演じている。医師の長時間労働をテーマに、3組の夫婦の物語を展開させながら、若い医師の成長を描いた。前作に続き深川栄洋監督がメガホンをとった。
栗原一止(櫻井さん)は、地方の救急病院・本庄病院に勤務する内科医。妻・榛名(宮崎さん)の出産も間近に控え、仕事にまい進していた。一止が住む御嶽荘に新たな住人・屋久杉(濱田岳さん)がやって来たころ、一止と同じ大学だったエリート医師・進藤辰也(藤原さん)が赴任してくる。友との再会を喜んだ一止だったが、やがて進藤が緊急の呼び出しに応じず、時間外勤務をしないことで周囲とあつれきを起こしていることが分かり、一止も衝突してしまう。進藤は、家族を犠牲にして働くことへの疑問を一止にぶつける。そんな折、一止の恩師である貫田内科部長(柄本明)が院内で倒れてしまい……という展開。
地域医療の厳しさだけでなく、一止がやりがいを感じ働いている姿が、前作以上に伝わってくる。櫻井さんが演じる内科医のホンワカした雰囲気に、藤原さんが演じる進藤医師のとがった感じが対比となり、医療現場で働く者の葛藤や夫婦のあり方がリアルに描かれる。人間の病や死は24時間いつでも起こりうることだ。しかし、医師が医師として持てる時間は24時間ではない。医師不足、長時間労働、やりたい放題の患者……医療現場の問題が数多く出てくるが、全体的な雰囲気は重くはない。若い医師が壁にぶつかり、必死で取り組んでいる姿を映し出し、爽やかな成長物語にもなっている。ロケ地となった信州の風景は、澄み渡った空気がスクリーン越しにも感じられるほどで、爽やかな雰囲気に一役も二役も買っている。市毛良枝さんが演じる貫田内科部長の妻が、医師を夫に持つ妻の先輩として榛名に接している姿がとても温かく、心に残るいいシーンだ。21日からTOHOシネマズスカラ座(東京都千代田区)ほか全国で公開中。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。