人気ホラー映画「呪怨」の最新作「呪怨−終わりの始まり−」(落合正幸監督)が全国で公開中だ。今作がホラー映画初主演で、恐ろしい出来事に巻き込まれていく小学校の教師・結衣役を熱演したモデルで女優の佐々木希さんに、ホラー映画の印象や演じてみた感想、女優業などについて聞いた。
◇ホラー映画が苦手で今まで見たことがなかった
ハリウッドでリメークされるなど日本ホラー映画の代名詞ともいえる「呪怨」シリーズ。佐々木さんは「本当にホラー映画が苦手で今まで見たことがなかったのですが、そんな私でも『呪怨』シリーズは特に怖いホラー映画というイメージがあります」といい、「誰でも知っている人気シリーズに出演でき、光栄な気持ちもありましたが、半面、大丈夫かなという心配もありました」と出演が決まった時の率直な気持ちを語る。
映画は、小学3年生の学級担任を急きょ務めることになった結衣(佐々木さん)が、不登校を続ける生徒・佐伯俊雄(小林颯=こばやし・かい君)の自宅を訪問したことがきっかけで不可解な現象に襲われるという物語。ホラー映画が苦手だという佐々木さんだが撮影自体は「怖くなかった」といい、「怖くないからこそ逆に大変だったかもしれない」と振り返る。その理由を「スクリーンではさまざまな怪奇現象が起こっていますけど、撮影現場はスタッフさんたちが準備に動き回りながらも和気あいあいとした雰囲気。そういった中で本気で怖がるためには集中力や想像力を豊かにしないといけなかった」と語る。特に怖かったシーンに同シリーズの恐怖の象徴である佐伯伽椰子(最所美咲=さいしょ・みさきさん)と俊雄との遭遇シーンを挙げ、「伽椰子さんと俊雄君にはさまれたのですが、 現実にあったらショック死するかもしれません」といってほほ笑む。
◇見る人が何をしたら怖いのかを考えながら演じた
佐々木さんは、ホラー映画には今作が初主演となる。「普段はそれほど驚いたり叫んだりということはないので、怖がり方を学ばせてもらった現場でした」と新たなステップへとつながる体験をしたという。そして「自分の“引き出し”が少し増えたので、またホラーやサスペンスなんかもやってみたいなと思いました」と笑顔を見せる。ちなみに、今作では怖がる役を演じているが、驚かせる側の役はどうかと聞くと、「伽椰子さんのようなことはできないですね。体の動きもすごく、コンピューターグラフィックス(CG)ではなく本当にご本人が動かれていたのをそばで見ていたので、感動しました」と迫真の演技と怖がらせることの難しさに素直に驚いていた。
今作のストーリーについて「面白くて、あっという間に(台本を)読み終わった印象。怖いだけでなく、きちんとした物語性がある」と印象を語る佐々木さん。脚本の中でも特に「伽椰子さんと俊雄君との関係性」に興味を引かれたといい、「俊雄君は伽椰子さんが旦那さんと結ばれて生まれたはずだけど、台本ではそうじゃない読み方もできる。現場でもみんなが『私はこう思う』『こうなのでは』といった感じで意見が異なっていました。夢と現実が混ざっているような感じも面白かったです」と絶賛する。
佐々木さんが演じたのは小学校の先生という役どころ。「子供が大好き」と笑顔を見せる佐々木さんは、「ほとんどが学校か俊雄君と一緒のシーン。撮影中は常に子供たちが周りにいるような環境だったので、撮影に行くのが楽しみでした。(俊雄君を演じる)颯君も普段は可愛い男の子ですからね」と充実した日々を振り返る。俊雄役の小林君については「普段はとても可愛いのに、猫背で小さくなると不気味で、俳優さんとして(演技力が)すごいと思いました」と驚かされたそうだが、「撮影が終わったあと、メークを落として小学生に戻ると、会話も小学生らしくなりホッとしましたし、可愛かった」とギャップに魅力を感じてしまったと笑う。
ホラー映画出演を通して、「(映画を)見る方は何をしたら怖いのかを考えながら演じていました。演じている間は、たとえば目の焦点が合っていなかったら何を考えているのか分からなくて怖いのか……などいろいろと模索しました」と語る。落合監督からは「とにかく集中力と想像力を途切れさせないように」というアドバイスがあったといい、「落合監督はすごく明快に説明してくださる方なので、何をすればいいのかが即座に理解できました。とにかく役については、監督がおっしゃるものに近づけたらいいと思って委ねていましたが、ストーリーに関しては何が正解なのか、何が怖いのかといったことをいろいろと話し合いました」と舞台裏を明かす。
◇すぐに感情を切り替えられるような女優になりたい
佐々木さんは映画にドラマにと女優としての活躍の場を広げ、ジャンルを問わずさまざまな作品に出演している。これまで世間が抱いていた“佐々木希像”を覆すような作品出演について、「ここ1、2年くらいで心境に大きな変化がありました」と切り出した。続けて「自分自身の考え方や現場でのあり方など、若い頃は何も考えていなかったと思います」と自省し、「明確なきっかけがあったわけではないので(変化したのは)年齢とともにだと思います」と吹っ切れたという自身の変化を分析する。
さらに「今回は主演ですし、いろいろと不安に思うところもありましたが、とにかく楽しい現場になればいいと思っていました。以前はそういうことすら考えなかったですし、考える余裕もなく、自分の責任だとも思わなかった」と佐々木さん。そして「いろいろと強がっていたのかもしれない。若いから気を張っていた部分がありました。そういうものが一気に抜けた気がして、その方が楽しいなと思うようになりました」と女優として一歩成長したことを明かす。
女優としてのステップアップをしていく中で、佐々木さんはミステリーやサスペンスといったジャンルに意欲を燃やす。一方で「何をやってもうまくいかない、さえない女の子の役をやってみたい。“普通”というのが一番難しいと思います。いろいろな役に挑戦したいですし、たくさん引き出しを増やしたい」と声をはずませる。「不器用なので切り替えが上手にできる器用さがほしい。技術も大事ですが、すぐに感情を切り替えられるような女優になれたらいいと思っています」と目標を見据える。さらに今作の衝撃のラストを含めて「ホラーが好きな人には絶対面白いと思います」と改めてアピールした。映画は新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で公開中。
<プロフィル>
1988年2月8日生まれ、秋田県出身。 2006年に女性ファッション誌「PINKY」(集英社)のオーディションでグランプリを獲得しモデルデビュー。数々の雑誌の表紙を飾り、08年に「ハンサム★スーツ」で映画デビュー、09年には「天使の恋」で初主演を務める。以降、映画「アフロ田中」(12年公開)、映画「サンゴレンジャー」(13年公開)やドラマ「TOKYOエアポート~東京空港管制保安部~」(フジテレビ系)、ドラマ「お天気お姉さん」(テレビ朝日系)、「ファースト・クラス」(フジテレビ系)など数多くの作品に出演。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)