元TBSアナウンサーの雨宮塔子さんが、最新エッセー「パリ、この愛しい人たち」(講談社)を発売した。同局を退社後、1999年に渡仏し、現在もパリで家族と暮らす雨宮さんが、これまでに同地で出会った印象的な人や出来事についてつづっている。パリで暮らして15年目。「パリには、いろいろな題材が日常的に転がっている」と語る雨宮さんに、パリの魅力やお気に入りの場所、また異国で暮らす大変さを聞いた。
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「パリ、この愛しい人たち」は、女性誌「Grazia」の2012年5月号~13年8月号で雨宮さんが連載していた「瞼のパリ 忘れ得ぬ私的名場面」に、7本の書き下ろしを加えたもの。たくましく美しく生きるパリジェンヌの姿や、異国で出会った日本人、2人の子供たちとの印象的なエピソードなど、雨宮さんのパリでの“私的名場面”を切り取っている。
同書の中には、自分のスタイルを持ったファッショナブルな女性や、タフに仕事も育児も頑張るシングルマザーなど、個性豊かなパリジェンヌたちが多く登場するが、雨宮さんはパリの魅力を「いくつになっても女性が女性でい続けられる場所」と語る。「パリは、大人の文化というか、大人を大事にしてくれる街なんですね。ご年配のカップルもよく見かけますし、おばあちゃんになっても、年齢が原因で引きこもらず、外に出てみたいという気分にさせられる場所ですね」と続ける。
また、ファッションについても「流行を取り入れるのではなく、自分らしいものを追求して、自分のスタイルを確立していくのがおしゃれという考え方」といい、「それは、他人の目を気にしないことにもつながるんですが、女性をもっともっと輝かせるような風潮があります」と笑顔で語る。雨宮さんは、そんなパリの魅力をエッセーなどで発信することで、「日本人女性がもっと楽になれるような投げかけができれば。押し付けではなく、自然に『そういうふうになりたいな』と思えることを紹介していきたい」と語る。
同書の表紙と巻頭7ページには、「パリに住んで以来、15年の旧知の仲」というフォトグラファーの篠あゆみさんによる、パリの街並みを背景にした雨宮さんの写真がカラーで掲載されている。自然体で街に溶け込んでいる姿が印象的だが、雨宮さんにとって今、お気に入りの場所は「北マレ地区」。「この界隈は、最近、モダンなホテルやお店がたくさんできていて、とても元気なスポット。また、ブルジョワとは違う、お金持ちぶらないことがカッコいいという考え方を持った“ボボ”たちが集まるところでもあります」と説明する。
特によく行くのが、日本でも人気の子供服「ボンポワン」のオーナーであるマリー・コーエンさんが始めた「メルシー」というコンセプトショップ。「洋服、雑貨、観葉植物などあらゆるものを扱っていて、カフェも併設しているんです。『利益は恵まれない子供たちのために』という理念のもと、チャリティーを目的にしているお店なのですが、来てくれたお客様に対して『ありがとう』という気持ちがお店の名前になっているんですね」と語る。
パリ暮らしを謳歌している様子の雨宮さんだが、一方で「大変なこともある」という。中でも「すべてを文章で提出しなくてはいけないところ」だといい、「紙の文化っていうんでしょうか。子供が学校を休むにも、日本なら電話で済むけれど、フランスの場合は、その後に必ず文書をメールで送らないといけないんです。お財布を落としてクレジットカードを止めるのにも文書がいる。電話して『すぐにストップしてください』とはならないんですよ」と苦笑する。
ほかにカルチャーショックを受けたのが、「あちらの人は謝らないことが多い」こと。「謝ることが裁判につながってしまうと危惧してのことなのかもしれないんですけど。『明らかに違うよね』ということも、それを認めない」と日本との違いに戸惑ったという。「昔は『私だけが我慢すればいいや』と思っていた」と語る雨宮さんだが、「納得いかないことも多くて。だから、私も図々しくなるしかないって。でないと、子供たちも守っていけない」と長いパリ暮らしで変化したという。「怒ると、フランス語がわーっと出てくるようにもなりました。日本では出会わないようなことがよく起こるので、思考回路がフランス語になるのかな」とパリでたくましく生きる母の顔を見せた。
次回は、「毎日、母親業です」と語るパリでの家族との日常生活を聞く。
<プロフィル>
あめみや・とうこ。1970年生まれ、東京都出身。1993年、成城大を卒業後、TBSに入社。「どうぶつ奇想天外!」「チューボーですよ!」などの人気番組を担当する。99年に退職し、パリに遊学。フランス語、西洋美術史を学ぶ。2002年に「パティスリー・サダハル・アオキ・パリ」のオーナーシェフ・青木定治さんと結婚し、03年に長女、05年に長男を出産。現在はフリーキャスター、エッセイストとして活躍している。著書に「金曜日のパリ」「それからのパリ」「小さなパリジェンヌ」「パリ アート散歩」「雨上がりのパリ」「パリごはん」「パリのmatureな女たち」などがある。
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