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アカデミー賞女優のヘレン・ミレンさんが出演する映画「マダム・マロリーと魔法のスパイス」(ラッセ・ハルストレム監督)が、11月1日から全国で公開される。ミレンさんが扮(ふん)するフランス料理店の経営者と、その向かいにレストランを開いたインド人家族の“熱い戦い”を背景に、人情の機微を温かく描き出すヒューマン作だ。「サイダーハウス・ルール」(1999年)や「ショコラ」(2000年)といった作品で知られるハルストレムさんが監督を務め、スティーブン・スピルバーグさん、米トーク番組の司会者として有名なオプラ・ウィンフリーさんがプロデューサーに名を連ねている。
インドのムンバイでレストランを経営していたカダム一家は、選挙がらみの反対派の焼き打ちに遭って店を失い、新天地を求めてフランスまでやって来た。家長であるパパ(オム・プリさん)は、山間で見つけた空き家を気に入り、そこでレストランを開くことに。ところが一つ問題があった。店の向かいには、ミシュランで一つ星を獲得するマダム・マロリー(ミレンさん)が経営するフレンチレストランがあったのだ。案の定、両店の間で“戦い”が始まる……という展開。
ライバル同士の2軒のバトルを糸口に、文化や民族の違いから生まれる衝突を料理対決という比喩的なもので表現し、平和的解決の道筋を示していく。それとともに、カダム一家の家族愛と、カダム家のコックで次男のハッサン(マニッシュ・ダヤルさん)の成長に触れ、心温まる感動作としてまとめ上げている。インド映画“らしさ”が垣間見られるのも特徴で、開店準備に取りかかるカダム一家が、躍動感あふれる音楽に乗って忙しく動き回る姿にはワクワクさせられたし、徐々にヒートアップしていくカダム一家とマダム・マロリーの店のシェフたちの感情を、鮮やかな包丁さばきと俳優たちの表情で表現する調理シーンにはドキドキさせられた。ただ、邦題からイメージされるストーリーと実際の物語との隔たりを、個人的には「思いも寄らない展開」と楽しむことができたが、そうでない人が「ミスリードされた」と思わないかの懸念が残る。11月1日からBunkamuraル・シネマ(東京都渋谷区)ほか全国で公開。(りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。