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映画「おかあさんの木」のワンシーン (C)2015「おかあさんの木」製作委員会
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映画「おかあさんの木」のワンシーン (C)2015「おかあさんの木」製作委員会

注目映画紹介:「おかあさんの木」 鈴木京香主演 戦地へ息子を送り出す母の大きな愛に胸打たれる

 女優の鈴木京香さん主演の映画「おかあさんの木」(磯村一路監督)が6日に公開される。約45年前に発表された大川悦生さんの児童文学が原作で、戦後70年企画として「解夏(げげ)」(2004年)などの磯村監督がメガホンをとり、映画化された。7人の息子を戦争にとられながらも無事を祈って帰りを待つ母の愛や、親子の愛情などを描いている。戦争によって人生を翻弄(ほんろう)された人々の姿や心情を丁寧に表現し、どのような時代であれ、強く生きる人々に心打たれる。

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 昭和初期、長野県の小さな田舎の村に暮らす女性ミツ(鈴木さん)は、謙次郎(平岳大さん)と結婚し7人の息子に恵まれ、裕福ではないが幸せな日々を送っていた。ある日、謙次郎が心臓発作で急死し、ぼうぜんとするミツだったが、さらに戦争が始まり一郎(細山田隆人さん)、二郎(三浦貴大さん)ら成長した息子たちが次々と徴兵されてしまう。ミツは息子を送り出すたびに桐の木を1本ずつ庭に植え、息子たちの帰りを待ち続けるが……というストーリー。

 児童文学を基にした古典的な泣ける映画だと分かっていても、じんわりと涙腺を刺激される。序盤の明るい雰囲気から一転、当時の状況を再現するかのように次第に暗く重くなっていく展開で、悲しみとつらさが詰まっているが、その一方で母親の愛情を再確認することができる。戦争を題材にした映画でも、身内を兵隊として送り出した母や家族を描いた作品は少なく、通常の戦争映画とは一線を画す。構成はシンプルな反戦映画だが、母親役を演じる鈴木さんから漂う風格が物語に重みを与え、単純な感動ものだけにとどまっていない。子供たちの姿を少年時代から描いていることも感情移入に拍車をかけ、涙腺を刺激する。鑑賞後は、現代の平和な日常がとてつもなくいとおしく感じられた。丸の内TOEI(東京都中央区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)

 <プロフィル>

 えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。

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