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2014年に公開され、アルゼンチンで年間ランキング第1位を記録。その上、歴代興行収入1位までも獲得したという映画「人生スイッチ」が25日から公開される。ダミアン・ジフロン監督が自らが書いた脚本を読み、プロデューサーを買って出たスペインの名匠ペドロ・アルモドバル監督が「素晴らしい脚本。一つのコンマすら変えずに作るんだ」と激励したという今作。今年の米アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた。わずかなつまずきから“スイッチ”が入り、行動をエスカレートさせていく登場人物たち。当人はもとより観客をもあぜんとさせる結末が待っている、六つの物語からなるオムニバス作品だ。
同じ飛行機に乗り合わせた人々。実は彼らには共通点がある……という第1話。かつて父を自殺に追いやった男が店に現れ、娘のウエートレス(フリエタ・ジルベルベルグさん)がそれを調理担当の女性(リタ・コルテセさん)に打ち明けると、調理担当は思いもよらぬ行動に出る……という第2話。第3話は、前を走るノロノロ運転の車を追い越したダンディー男(レオナルド・スバラーリャさん)だったが、その数分後、車がエンストし……というストーリー。そのほかに、車をレッカー移動されたことから道を踏み外していく男(リカルド・ダリンさん)。息子が起こした交通事故をもみ消そうとする金持ち男(オスカル・マルチネスさん)。結婚式の最中に新郎の浮気相手に気付いてしまった新婦(エリカ・リバスさん)の暴走の3編が続く。
1編目早々、目が点になるほど驚かされ、2編目で口があんぐり、3編目でもはや言葉を失うほどの展開とオチが待っている。とりわけ最終話の新婦の暴走ぶりといったらない。しかし、さすがラテン系の人々、やることなすことが熱いなあ、と対岸の火事を見るように面白がってばかりもいられない。なぜなら、現代人の多くはさまざまなストレスにさらされている。いつなんどきスイッチが入り、自分が同じ立場に……加害者、被害者を問わず……立たされるか分からないからだ。ブラックな笑いの中にも自らを戒める教訓がたっぷり詰まった、なんともためになる映画だ。25日からヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほか全国で公開。 (りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。