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ニューヨークを舞台に、夫と別れた女性の再出発を描いた「しあわせへのまわり道」(イサベル・コイシェ監督)が28日から公開される。米ニューヨーカー誌に連載された実話によるエッセーを映画化。コイシェ監督作は「エレジー」以来2度目の出演となるパトリシア・クラークソンさんと名優ベン・キングズレーさんの共演が楽しめる。
売れっ子書評家のウェンディ(クラークソンさん)は、順風満帆だった人生がいきなり崩壊した。夫が浮気相手の元に去っていき、家に一人残される。ある日、タクシーの中に忘れ物をし、それをインド人運転手ダルワーン(キングズレーさん)が届けに来てくれる。これまで運転を夫まかせにしていたウェンディは、ダルワーンに運転を習うことにした。おっかなびっくり運転を始めたウェンディを、「さあ、前に進んで」と励ますダルワーン。思い出にしがみついていたウェンディだったが、文化や宗教の違うダルワーンと接するうちに、自分がなぜ孤独になったのかに気づいて……という展開。
熟年離婚の女性の再出発を、運転教習に重ねて見せていく。ウェンディには美貌があり、教授になり損ねている夫よりも社会的立場は上のようだ。何でも手に入れてきた女性が弱さを見せるところがこの映画の注目すべき点だ。「私に落ち度がないのに、なぜ」と悔しがり、不安と怒りにつぶされそうになり、夫恋しさを素直にぶちまける。冒頭、派手な夫婦げんかでグズグズだったウェンデイが、どう変わっていくのか。書評家という孤独な仕事をするウエンディは、周囲を見渡しながら車を運転することに四苦八苦。その、危なっかしいことといったら笑ってしまうほどだ。彼女の人生のアクセルを再び踏み出す助っ人となるのが、インド人運転手のダルワーン。ウェンディの感情を細やかに描くのと同様に、伝統を重んじるシク教徒のダルワーンの暮らしぶりを細やかに描き、宗教による結婚観の違いも浮き彫りにする。2人の会話が絶妙で、結婚のありようも人それぞれということに気づかされる。一方で、共通して何が大切なのかも教えられる。「死ぬまでにしたい10のこと」(03年)などのコイシェ監督作。脚本は「ナインハーフ」(86年)などのサラ・ケルノチャンさん。TOHOシネマズ 日本橋(東京都中央区)ほかで28日から公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。クラークソンさん、すてきな女優さんですね。今作ではファッションも見どころです。