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ノルウェーの首都オスロに住む3人の少年のドキュメンタリー作「バレエボーイズ」(ケネス・エルベバック監督)が、29日から公開される。一流のバレエダンサーになる夢を追う3人のひたむきな姿と友情、そして成長を生き生きと映し出している。海外のさまざまな国際映画祭で好評を博した作品。
ルーカスさん、トルゲールさん、シーベルトさんの3人は中学生。ともに週6日のバレエレッスンを受けながら、一流のダンサーを目指していた。3人は、お互いがライバルだが、一緒にふざけ合う親友同士。オスロ国立芸術アカデミー(KHiO)への入学が目標だ。教師は彼らを心配し、ほかの進路も考えることとアドバイスする。とりわけシーベルトさんはコンクールでの失敗と学業優先を願う親のために、心が揺れていた。ある日、出願していないのにもかかわらず、ルーカスさんに名門のロンドン・ロイヤル・バレエスクールからオーディションの招待状が届いた。3人の進路はどうなるのか……という展開。
なんてみずみずしい作品なのだろう。思春期の輝きがこの映画には詰まっている。バレエで鍛え抜かれた美しい体の躍動は、まるで命そのものだ。10代の貴重な時間を共有する感動もある。あどけない笑顔の少年たちは、映画を見始めて1時間後にはすっかり見違え、大人びている。コンクールで失敗し挫折、バレエは自分にとって何なのか、迷う姿も映し出される。カメラは躊躇(ちゅうちょ)なく、彼らが着替えるロッカールームにまで入り込む。そこでふざけ合う姿は、普通の中学生だ。やがて人生の岐路に立ち、卒業式で並んで歌っていた3人が、今までと同じではいられなくなる日がやってくる。ルーカスさんにだけ、名門スクールから声が掛かるのだ。高額な学費、家族や仲間と離れて異国へ渡る寂しさ、さまざまな不安を抱えながら、オーディションに挑むルーカスさん。トルゲールさんとシーベルトさんは、ルーカスさんの背中を押してくれたが、3人の関係は少し変化していく。微妙な時期を迎えた3人が、カメラの前で心の内を正直に話すのも、エルベバッグ監督との信頼関係が出来上がっていた証しなのだろう。岐路に立つ若者の姿を見事に切り取った秀作だ。29日からヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。街猫を題材にした「先生と迷い猫」(10月公開作)を応援中。