映画「ホコリと幻想」のワンシーン (C)2014 Real Scale project/DESAFIADORES
演劇ユニット「TEAM NACS(チーム・ナックス)」の戸次重幸さんが主演を務める映画「ホコリと幻想」(鈴木聖史監督)が26日に公開される。今作は北海道旭川市を舞台に、東京で挫折し、故郷である旭川へと戻ってきた男が、高校時代の同級生ら周囲の人間と衝突するなど人間模様が繰り広げられる。自らついたうそで追い詰められていく孤独な男・松野を戸次さん、松野の元恋人・美樹を美波さんが演じるほか、遠藤要さん、内田朝陽さん、奥山佳恵さん、本田博太郎さんら実力派キャストが脇を固めている。
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高校を卒業して以来、旭川に帰郷した松野(戸次さん)は、元恋人で今は人妻の美樹(美波さん)をはじめ同級生たちと再会する。東京でアーティストとして活躍してきたと自称する松野は、市が募集する木工モニュメント製作のチラシを目にし、モニュメント作りに没頭するが、一向に製作が進展しない状況に同級生たちからは疑われ、次第に追い詰められていく。松野はもう一度自分を取り戻すため、改めてモニュメント製作に向き合うが……というストーリー。
映画は旭川を舞台にしているが、上京して時がたち、やむなく故郷に戻るという経験がある人は少なからずいるはずで、多くの人が共感できるのではないだろうか。もちろん、主人公の松野ほど自分のことを「天才」とか「成功者」などと吹聴する人は少ないだろうが、「自分はまだできる」「自分には運がなかっただけだ」などと言い換えてみれば、共感したくはないものの松野の心情が手に取るように分かってしまうのも事実だ。松野を演じる戸次さんが虚勢を張り、自分勝手な行動ばかりする中で、孤独や再生に向かってもがく男を熱演し、その痛々しさには鳥肌が立つほど。物語としては松野の苦悩にスポットを当て過ぎたためか、美樹との関係性や高校時代のエピソードといったバックボーンが薄めな印象はあるが、テンポ感とキャストの演技が秀逸で見入ってしまう。登場人物たちの心情にそくして感傷に浸りつつ、今の自分はどうかと問いかけたくなる。26日からヒューマントラストシネマ渋谷(東京都渋谷区)ほか全国で順次公開。(遠藤政樹/フリーライター)
<プロフィル>
えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。
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