「ヴィジット」のワンシーン (C)Universal Pictures.
映画「シックス・センス」(1999年)や「サイン」(2002年)などの作品で知られるM・ナイト・シャマラン監督の最新作「ヴィジット」が23日から公開される。最近は「エアベンダー」(10年)や「アフター・アース」(13年)といったアドベンチャー・アクション大作を手掛けてきたシャマラン監督にとって、スリラー映画は「ハプニング」(08年)以来7年ぶりとなる。その間の思いをつぎ込んだのか、身の毛もよだつほどのシーンが用意された、原点回帰をうたうにふさわしい作品に仕上がっている。
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15歳のベッカ(オリビア・デヨングさん)と13歳のタイラー(エド・オクセンボールドさん)の姉弟は、両親の離婚によるショックを癒やすために、ペンシルベニア州にある母(キャスリン・ハーンさん)の実家を訪れることに。両親の結婚は駆け落ち同然だったために、ベッカとタイラーはこれまで祖父母に会ったことがなかった。期待と不安の中、初めて会った祖父母(ピーター・マクロビーさん、ディアナ・デュナガンさん)は優しく、滞在中の1週間を楽しく過ごせそうだった。ところがその夜、異様な気配で目が覚めた2人は、絶対開けてはいけないという祖父の言いつけを破り、部屋のドアを開け、ある光景を見てしまう……というストーリー。
今回シャマラン監督は大胆な試みに挑戦。全シーンを、姉弟が持つハンディカメラによる映像、いわゆるPOV(主観映像)で構成した。それによって観客は、1日たつごとにとんでもない状況に追い込まれていくベッカとタイラー同様、徐々に恐怖にからめとられていくことになる。祖母がクッキーを無心にほお張ったり、ものすごいスピードで這(は)い回ったり、その形相や様子はひたすら怖い。そんな祖母を病気なのかと気遣う姉弟に祖父がするもっともらしい説明や、祖父母の留守中に訪ねて来る人々など、至るところに伏線が張られている。ただ、正直なところPOVによる撮影手法のせいで、前半は集中力を保つことを強いられた。しかしそれをやり過ごすと突然“閃光(せんこう)”が差し、そこから度胆を抜かれる結末までは一気に進んだ。シャマラン監督による脚本、演出もさることながら、祖父母役のマクロビーさん、デュナガンさんの演技はさすがの一言に尽きる。23日からTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。 (りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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