映画「エール!」のワンシーン (C)2014−Jerico−Mars Films−France 2 Cinema−Quarante 12 Films−VendÔme Production−Nexus Factory−Umedia
フランスで4週連続1位のヒットを飛ばし、今年東京で開催されたフランス映画祭で観客賞を受賞した「エール!」(エリック・ラルティゴ監督)が31日に公開される。田舎を舞台に、聴覚障害を持つ一家のうち、唯一耳が聴こえる少女が歌の才能を認められて夢に挑もうとするヒューマン作。本国で人気を誇る歌手のルアンヌ・エメラさんが、澄んだ歌声を聴かせている。
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パリから離れた田舎の村。酪農を営むベリエ一家は、熱血漢の父親(フランソワ・ダミアンさん)、陽気な母親(カリン・ビアールさん)、高校生のポーラ(ルアンヌ・エメラさん)、好奇心旺盛な弟の仲良し4人家族。ポーラ以外は全員耳が聴こえない。家族の合言葉は“家族は一つ”。ある日、ポーラの歌声を聴いた音楽教師トマソン(エリック・エルモスニーノさん)は、彼女の才能を見いだし、パリの音楽学校のオーディションを受けるよう勧めるのだが、一家の手話通訳もやっているポーラはパリ行きに思い悩んで……という展開。
映画を見ていると主人公のポーラが大好きになる。耳が聴こえない家族の耳となり、家業や通院などの手伝いをしてきたのは、彼女にとって当たり前の生活だ。しかし、誰もがこんなふうに立ち振る舞えるかといったら、そうではないだろう。彼女は高校生で、自分のやりたいことと向き合う年齢だ。夢を貫くべきなのか、家族の助けとなって暮らしていくべきなのか。板ばさみになる姿が、けなげ過ぎていとおしくなる。 こんないい娘さんに育ったのも、一家を見ていればよく分かる。働き者の父親とキュートな母親は恋人同士のように仲が良く、笑いを誘うシーンもいっぱいある。あっけらかんとした一家の様子が、映画を明るいものにしている。オープンな一家に初めてできた隠し事。それが、ポーラの夢だった。気になる男子が入部したという理由で入ったコーラス部で、小さな声から堂々と歌うまでに成長していく姿がまぶしくて爽やか。フランスで1960年代半ばに人気だったミシェル・サルドゥさんのヒット曲の数々が使用され、物語とリンクしながら、シーンを盛り上げていく。ヒロインを演じたエメラさんは、セザール賞とリュミエール賞の新人賞をダブル受賞。デビューアルバムも大ヒットし、本国で注目を集めている。新宿バルト9(東京都新宿区)ほかで31日から公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。今週公開の「裁かれるは善人のみ」(31日公開)は力強い作品でした。
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