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「ソーシャル・ネットワーク」(2010年)や「アメイジング・スパイダーマン」シリーズ(12、14年)で知られるアンドリュー・ガーフィールドさんが主演した映画「ドリームホーム 99%を操る男たち」(ラミン・バーラニ監督)が30日から公開される。“住宅差し押さえビジネス”を巡る話だが、一人の青年のささやかな幸せの崩壊、再起、転落がスリリングに展開し、さながらサスペンス劇を見ているような気にさせられる。イラン系米国人のバーラニ監督が、西島秀俊さん主演の映画「CUT」のアミール・ナデリ監督と共同で脚本を執筆した。
不況のあおりを受け、収入が激減、住宅ローンを滞納していた大工のデニス・ナッシュ(ガーフィールドさん)は、とうとう、息子(ノア・ロマックスくん)と母(ローラ・ダーンさん)と暮らす自宅から強制退去させられてしまう。モーテル住まいを強いられ職探しをするデニスだったが、新しい仕事は見つからない。そんな彼を雇ってくれたのは、自分たちを追い出した不動産ブローカー、リック・カーバー(マイケル・シャノンさん)だった。自分と“同類”の庶民から家を奪うカーバーの非情なやり方に、当初、良心がとがめたデニスだったが、仕事を進めるうちに徐々に価値観が変わっていき……という展開。
デニスが家を失うまでの展開がすこぶる速く、カーバーが家主たちに退去を迫る様子は緊張感をはらんでいる。カーバーにとって、家は投資の対象であり、豊かさの証し。対して、デニスにとってのそれは、家族との憩いの場であり、思い出が詰まった宝だった。その大切なものを取り戻したい一心で、庶民を追い込むカーバーの仕事に加担するデニス。人の道に外れた行いと知りつつ、そうせざるを得ない彼の葛藤が、住宅差し押さえビジネスの裏側ともどもスリリングに描かれている。米国が舞台だが、人ごととは思えない内容で、持ち家であろうと借家であろうと、住む家があるということは、なんて幸せなことかと痛感させられた。今作では、俳優ではない一般人も起用し、立ち退きをしいられる家の持ち主の多くも本物の住人だという。なんとも酷な作り方だが、だからこそ、家を奪われたときの絶望感が、カーバーの“犠牲者”越しに、わが事のように迫ってくるのだろう。30日からヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほかで順次公開。 (りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。