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注目映画紹介:「ブラック・スキャンダル」 ジョニー・デップ演じる伝説のギャングに身の毛もよだつ

 米俳優のジョニー・デップさんが伝説のギャングのボスに扮(ふん)し、米国史上最悪の汚職を描いた「ブラック・スキャンダル」(スコット・クーパー監督)が30日から公開される。ギャングがFBI、政治家と手を組んでいた実話を基にしたバイオレンス作。デップさん、ベネディクト・カンバーバッチさん、ジョエル・エドガートンさん、ケビン・ベーコンさんら豪華なキャストが顔をそろえた。

 1975年。サウスボストン。アイルランド系移民が住む地域のギャングのボス、ジミーことジェームズ・“ホワイティ”・バルジャー(デップさん)は、FBI捜査官のジョン・コノリー(エドガートンさん)に、抗争相手のイタリア系マフィアを一掃しようと持ちかけられる。コノリーの情報屋となったジミーは、部下とともに悪事に手を染めていく。ジミーの弟でマサチューセッツ州上院議員のビリー(カンバーバッチさん)も含めて3人は幼なじみだった。やがて絶大な権力を持ち凶悪犯となっていったジミーは、新任の連邦検事(コリー・ストールさん)に目をつけられて……という展開。

 デップさんが演じるのは薄めの頭髪に革ジャンの強烈なビジュアルの2011年に逮捕された伝説のギャングだ。どこまでも冷酷非道で、妻子や母親、弟ら肉親に見せるふとした表情には温かみやあやうさも垣間見えるが、登場だけで嫌な気分になるほどのシーンもある。次第に人間味を失っていく姿には身の毛もよだつほどだ。信じられないが実話が基になっており、立場の異なる3人の男たちに興味を引かれる。デップさん、エドガートンさん、カンバーバッチさんの繊細な芝居によって、映画にどんどん引き込まれていく。地元の友達としてお互いが“帰る場所”となるはずの結びつきが、権力を得ることによってゆがんだ方向に進んでいく。カリスマ性のあるジミーに、少しずつ似てくるコノリー。そんなコノリーに冷静な目を向ける妻も印象的だ。有力な政治家である弟は、兄のことをどう思っていたのだろうか。想像力をかき立てられる。

 チンピラ同士の結びつきが、他者の登場によってあやうく崩れ去るのも現実的だ。ブレーキの利かない暴走車となり、止める者がいなかったジミーの孤独感が、エンディングに流れる曲によって余韻となって残される。「クレイジー・ハート」(2009年)、「ファーナス/訣別の朝」(13年)のクーパー監督の最新作。30日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。ギャングの実家のインテリアが可愛かった。

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