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「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズなどの名優イアン・マッケランさんが引退後のシャーロック・ホームズを演じた「Mr.ホームズ 名探偵最後の事件」(ビル・コンドン監督)が18日から公開される。年老いたホームズが少年に刺激を受けながら、過去に解決できなかった事件の真相を探る姿を描いている。ミッチ・カリンさんの小説「ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件」が原作。
93歳になったシャーロック・ホームズ(マッケランさん)は、海辺の家で養蜂をしながら穏やかな余生を送っていた。身の回りのことは住み込みの家政婦マンロー夫人(ローラ・リニーさん)とロジャー少年(マイロ・パーカーさん)がやってくれる。ホームズは自分を引退に追い込んだ未解決事件のことがいまだ気がかりで、当時のことを思い出しながら原稿を書いていた。その原稿を勝手に読んだロジャーは続きが気になり、ホームズにたずねる。しかし、マンロー夫人はロジャーを連れてここから出ていこうと思っていた……という展開。
名探偵と呼ばれた男の人生の終末期を見るのは、とても興味深い体験だ。座る姿も「どっこらしょ」。つえをついて歩く年老いたホームズ。人生のピークを過ぎ、体の衰えはもちろん、過去の事件を思い出すのも一苦労のようだ。相棒のワトスンはすでに亡くなり、兄も亡くしたばかり。ロジャー少年はホームズの心の奥底を、子どもの本能でまっすぐに理解している。「93歳だ」と話すホームズに、「大おじは102歳まで生きた」と優しく返す。ロジャー少年は頭のいいホームズを心から尊敬し、ホームズは彼に推理の才能を見る。この2人の関係から希望をもらえる。少年が刺激となってホームズは過去の記憶をたぐりよせる。
当時の事件が差しはさまれ、ホームズがなぜつまずいたのかが分かりかけていく。年を取ってから自分に気づくホームズの姿に、人間の可能性を見いだし深い感動を覚える。ホームズが真田広之さん演じるウメザキに案内され、原爆で焼け野原となった広島にやって来るシーンも印象的だ。死者を弔う市民の姿が、ホームズを通して反復されるとき、理屈で「死」や「嘆き」をとらえていたホームズに内面に変化が訪れていることが伝わってくる。「ドリームガールズ」(2006年)「トワイライト・サーガ」シリーズのコンドン監督が手掛けた。TOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほかで18日から公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。最近一番ドスンときた映画は、ドキュメンタリー作「大地を受け継ぐ」です。