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松田龍平さんと柄本明さんが父と息子を演じたホームコメディー作「モヒカン故郷に帰る」(沖田修一監督)が9日から公開される。故郷の島を離れて売れないバンドマンとなった息子が、父が病に倒れたことをきっかけに、その親子関係を見つめ直していく物語。もたいまさこさん、前田敦子さん、千葉雄大さんらも出演している。
永吉(松田さん)は、緑のモヒカン頭がトレードマークの売れないバンドマン。妊娠中の恋人・由佳(前田さん)とともに、結婚報告をかねて7年ぶりに故郷・戸鼻島(とびじま)に帰って来た。矢沢永吉をこよなく愛する父親・治(柄本さん)、広島カープの大ファンである母親・春子(もたいさん)、弟の浩二(千葉さん)と久しぶりに家族全員がそろった。だらしない息子に怒る治だったが、家に人を招いて大宴会を催し、結婚のお祝いをする。しかし、突然倒れた治にがんが発覚。治は中学校の吹奏楽部の指導をしており、練習に行けないことが気がかりで、永吉には「東京に帰れ」と言ってしまうのだが……というストーリー。
この作品は、とにかく明るい。父の病気が発覚するも、そこに悲壮感はなく、冒頭で見せる永吉の雄たけびとパンク音楽のハイテンションが、そのまま父親・治の「生きたい」というエネルギーに反映されているようだ。治は「矢沢永吉は広島の義務教育」という信念の持ち主で、そのブレない姿勢は体が弱っても変わらない。永ちゃんの曲「アイ・ラヴ・ユー,OK」を演奏する中学生たちの浮かない表情がなんともおかしい。病院にいながら指導を怠らない治に、中学生も少し困っているようだ。この押しつけがましさが、治と永吉の親子関係を想像させる。「親も死ぬんだ」……そんな事実を突きつけられた永吉が親孝行を始めるさまと、恋人・由佳の奮闘がほほ笑ましい。父と息子は、海辺で静かに会話する。そのシーンの素晴らしいこと。柄本さんと松田さんの芝居の呼吸は、できちゃった婚を報告に行く息子とがんこな父親の親子げんかからして、引き込まれるほどぴったり合っていて、母親役のもたいさん、恋人役の前田さんも含めて絶妙なせりふのやりとりと間合いで見せていく。
親孝行に間に合った永吉は幸せだ。地元に残って家族に囲まれて、好きなことに時間を使う治も幸せだ。明るくのどかな島の景色が、なおも幸せを運んでくる。「横道世之介」(13年)などを手がけた沖田監督が脚本も担当した。細野晴臣さんによるエンディング曲が心にしみわたる。広島先行公開中で9日からテアトル新宿(東京都新宿区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。今作の、母の味が「めんつゆ」にはうなずけました。