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狂言師の野村萬斎さんが現代劇に初挑戦した主演映画「スキャナー 記憶のカケラをよむ男」(金子修介監督)が29日に公開される。「ALWAYS 三丁目の夕日」や「探偵はBARにいる」などで知られる人気脚本家の古沢良太さんが書き下ろしたオリジナルストーリーで、残留思念(物や場所に残った人間の記憶や感情など)を読み取ることができる元お笑い芸人の男が、元相方と事件解決に挑む姿を描いている。特殊能力を持つ主人公の仙石和彦を萬斎さん、仙石の元相方・マイティ丸山をお笑いコンビ「雨上がり決死隊」の宮迫博之さんが演じ、杉咲花さん、木村文乃さん、「関ジャニ∞」の安田章大さんらが出演している。
残留思念を読み取る能力を持つ仙石和彦(萬斎さん)は、かつて丸山竜司(宮迫さん)博之)とお笑いコンビ「マイティーズ」を組み、能力を生かして活動していたが、能力の代償で人間不信に陥りコンビを解散。その後、仙石は極力、他人との接触を避けるためにマンションの管理人となり、丸山はピン芸人・マイティ丸山として活動することになった。ある日、丸山の所属する芸能事務所「峠プロダクション」に、女子高生の秋山亜美(杉咲さん)が、失踪(しっそう)したピアノ教師の沢村雪絵(木村さん)の行方をマイティーズに探してほしいと訪ねてくる。コンビを復活させたい社長の久美子(高畑淳子さん)に命じられ、丸山は10年ぶりに仙石と再会するが……というストーリー。
狂言の世界で活躍する萬斎さんが、猫背気味でぼそぼそしゃべる変人キャラを演じているところが面白い。普段は落ち着いていて貫禄すら感じさせる萬斎さんが、イメージと真逆の役に挑戦している様子に、次第に引き込まれていく。飄々(ひょうひょう)とした雰囲気を醸し出す仙石と、元相方で共に事件解決に挑む宮迫さん演じる丸山の掛け合いが軽妙で、正反対の性格がアンバランスながらも、どこか息の合ったコンビぶりを見せてくれる。謎解きのミステリーと、個性豊かな登場人物たちが織りなすコメディーが絶妙で、一歩踏み込んだ人間ドラマとしても完成度が高い。事件の真相は衝撃的だったが、もう少しシンプルな謎解きでもよかったかもしれない。キャストの味わい深い演技に酔いしれたい。29日から丸の内TOEI(東京都中央区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
<プロフィル>
えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。