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「ペレ 伝説の誕生」のワンシーン  (C)2015 Dico Filme LLC
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「ペレ 伝説の誕生」のワンシーン  (C)2015 Dico Filme LLC

注目映画紹介:「ペレ 伝説の誕生」 子ども時代のペレのけなげさに序盤で胸を打たれる

 “サッカーの王様”と呼ばれるペレの人生初期の逆転劇を描いた「ペレ 伝説の誕生」(ジェフ・ジンバリスト、マイケルジンバリスト監督)が、8日から公開される。スラム街で育った少年時代から、ワールドカップ(W杯)初出場で優勝を目指すまでの軌跡を、家族愛の中から見つめた。ペレ本人も製作総指揮に名前を連ねている。

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 ブラジルの貧しい村に住むペレと呼ばれた少年エドソン・アランチス・ドゥ・ナシメント(レオナルド・リマ・カルバーリョ君)は、友達と一緒に洗濯物を丸めたものをボール代わりにしてサッカーをするのが楽しみだった。1950年のサッカーW杯の自国開催で、優勝確実といわれていたブラジルチームが敗れ(通称・マラカナンの悲劇)、国民は落胆。父親ドンジーニョ(セウ・ジョルジさん)に、ペレは「いつか僕がプレーをして優勝する」と約束する。そして、地元のサッカー大会で見事なテクニックを披露したペレは、サントスFCのスカウトの目にとまって……という展開。

 17歳でW杯優勝を成し遂げた最年少記録が今だ破られていない“世紀のサッカープレーヤー”ことペレ。彼の人生の原点が語られている。スラム街の仲間とサッカーをする楽しさ。裕福な家庭の少年(のちにライバル同士になるが)にバカにされる悔しさ。悲しい事故によってサッカーをあきらめかけたときに父親から受けた愛情の温かさ。ペレ少年の感情の一つ一つが伝わってきて、そこにサッカーをやるべき理由が見える。前半の少年時代の姿だけで、早々に胸を打たれる。そして、欧州に引け目を感じたブラジルが、サッカーのスタイルに迷走する中、一度は封印した自由なプレーこそが、自国の魂であることに気づくエピソードで、英雄となるべき人の原点も見えてくる。

 選ばれた人の人生のたいていがそうであるように、ペレの人生も順風満帆ではない。チームプレーにポイントを置く監督と対立し、自分の個性がアダとなる。まだ17歳という若さで、他の選手に比べると体格も劣るペレ。しかしペレが自信を失うとき、励ます家族の姿が必ずある。そこが、サッカーに詳しくなくても家族の物語としても十分楽しめる。育った村の環境、アフリカ系ブラジル人であるアイデンティティーも描き込まれ、一人の英雄の物語だけに集約していない。「スラムドッグ$ミリオネア」(2008年)で米アカデミー賞を受賞したA・Rラフマーンさんの力強い音楽が映画を盛り上げる。TOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほかで8日から公開。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。最近、1980年代を振り返り中。

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