あなたにおすすめ
東京国際映画祭:綾瀬はるか、井上真央、米倉涼子がドレスアップ 芳根京子は振り袖、水原希子、河合優実、菊地凛子も
片思いをテーマにした八つの恋愛エピソードを描くオムニバス映画「全員、片想い」が2日に公開された。俳優の加藤雅也さんがパーソナリティーを務めるFMヨコハマの番組「BANG!BANG!BANG!」をきっかけに、小説投稿サイト「E★エブリスタ」と共同で片思いがテーマの小説を募集し、その中から選出された4本と映画オリジナルストーリー4本を映像化。さえない新入社員が仕事ができる上司に憧れる「僕のサボテン」(永田琴監督)で木下透役として主演した桜田通さんと、介護施設で働く男女の恋愛を描く「イブの贈り物」(伊藤秀裕監督)で主人公・穣を演じた横浜流星さんに話を聞いた。
◇それぞれのアプローチで役作り
さえない新社会人(桜田さん)と誠実な介護士見習い(横浜さん)という役柄をそれぞれ演じるにあたり、桜田さんは「なるべくその世界のリアリティーを崩したくはなかった」と話し、横浜さんは「介護士は経験したことがないので何も分からないからどうしたらいいだろうと思い、老人ホームで働いている友だちに接し方や話し方を教わってやりました」と明かす。
さらに桜田さんは、「最初に台本をいただいたときは全作品を知らない状態だったので、僕の中での『僕のサボテン』は、この世界観が正しいと思っていた」と説明し、「全部を通したときに、僕よりも芝居のトーンをもっとナチュラルに抑えている人たちもいれば、どこか現実的ではない世界観を描いている人たちもいて、そういうことを知らない状態で撮りましたが、僕はやり残したことがなかった」と手応えを感じている様子。そして、「そのかいあってか、本当に違う作品を7本見たような感覚だったので、変に周りのことを知らなくてよかったと思いました」と認め、「もし知っていたら意識して演じてしまい、皆さんが言ってくださった『僕のサボテン』のよさみたいなものが出なかったかもしれない」と推測する。
友人の実体験を役作りに生かしたと話す横浜さんは「その友だちがかもしれませんが……」と断りつつ、「おじいちゃん、おばあちゃんだからって、(いたわるような)『○○だよ』という(口調)よりは、本当に友だちのように接したほうがおじいちゃん、おばあちゃんは頼れるというか、近くなれるように感じると言っていて、自分は、優しくというか労わるような感じで話すイメージがあったので、そうなんだと」と納得したという。そんな横浜さんを見て桜田さんは、「その誠実さが僕は見ていて好きで、なんか流星くんに似ているな、と」と絶賛する。
◇互いに相手が出演するエピソードを称賛
互いのエピソードについて、「流星くんのエピソード(『イブの贈り物』)が本当に好きだから、すごく語ってしまいそう」と笑顔を見せる桜田さん。続けて「片思いってどこか寂しいところがありながらも、なんか淡い恋愛を思い浮かべてしまいがちで、自分の役もそうですし、(伊藤沙莉さんと中川大志さん出演の「MY NICKNAME is BUTATCHI」のような)高校生だったりとかがしっくりきた」と前置きし、「(「イブの贈り物」は)途中までどういう恋愛になっていくのかが、ちょっと分からなかったのですが、それがつながったとき、すっごく切ない気持ちの中に最後に恋をという展開で、本当にグッと来すぎて冗談抜きで見ながら泣いちゃいました(笑い)」としみじみと語る。
さらに、「こんな形の恋愛を見られるとは正直、思っていなくて、すごくハッとしましたし、いろんな形の好きになるという気持ちがありますが、自分の中では想像していなかったもの。本当にすごいなと思いました」と感動を口にする。聞いていた横浜さんは「ありがとうございます!」と言って深々と頭を下げた。
一方、横浜さんも、「乗っかっちゃう感じですが、どの作品も魅力的な中で、『僕のサボテン』が好きです」と明かすと、「本当に!? 斎藤工さんが(ここに)いてもそう言える?(笑い)」と桜田さんが冗談交じりにツッコミを入れる。「言えます!」と笑顔を見せた横浜さんは、「自分は年齢的にもまだ会社に入ったことがないし、経験していないからこそ、こういう恋愛いいなというふうに思いました」と気になった理由を説明する。
ここで知英さんの取材の際に「僕のサボテン」が一番いいと言っていたことを伝えると、「本当ですか!?」と驚く桜田さんをよそに、横浜さんが「憧れます」と納得の表情を浮かべる。すると桜田さんは、「それに関しては、(透の上司で先輩の)森絵梨佳さんを推していきたい」と言い、「今回のキャスティングは全作品がすごいと思いましたけど、その中でも自分の作品がやっぱり心に残っていて、森さんを上司にキャスティングした方は天才だなと思いました(笑い)」と敬意を表した。
◇2人の理想の女性像は…
今作の題材である片思いのイメージを、桜田さんは「苦しい」とひと言で表現する一方で、横浜さんは「付き合う前の方が恋愛は楽しいと、よく言うじゃないですか……」と前置きしつつ、「苦しいけれど何気ないことで楽しかったり、幸せに感じたりして、感情がすごく動くから、苦しくもあり、どっちもです」と語る。
桜田さんは「苦しい」とした理由を、「実らない片思いほど、ある種、この世界に対して無意味なものはないというか、自分の中でしか意味を見いだせないことが、とんでもなく苦しいと思っている」と持論を述べ、「本当にすてきな片思いもあると思いますが、そうではなくて本当に届かない片思いというものを想像してしまうので、苦しいという言葉が最初に出ます」と冷静に分析する。
そんな2人の理想の女性像は、「顔も髪形も声も職業も、好みが何もない」と桜田さんは打ち明け、「とにかく自分と同じぐらい好きでいてくれる人がいい。それに尽きるなと思います」と力を込める。そして、「(そういう相手に出会うのは)本当に難しいし、すごく個人の意見でわがままになってしまう」と自重しつつも、「どうかそんな人が現れることを願いながら生きています」と思いをはせる。
横浜さんは「自分もわがままで、結構マイペースな感じで生きているので……」と切り出し、「女の子らしいというか、そうやって合わせてくれるというか、ついてきてくれるような女性がいい」と理想の女性像を明かす。すると、「日本男児! 亭主関白ですね」と笑顔で桜田さんは指摘し、「自分を好きになってくれる人がいいって、なんか男らしくないかな」と自虐的に言って笑う。
◇この映画を見て感動できない男とは友だちにはなりたくない
自身が出演したエピソードに見どころを、「監督についていったので不安はなかったのですが、どういうものになるのかなというところはありました」と桜田さんは話し出し、「試写で見させていただいたとき、本当に監督が永田琴さんでよかったなと安心した気持ちになりましたし、内容は知っていても、ここは胸が締め付けられるなとか、僕も感情が動いて、すごくすてきな作品になってうれしかった」と満面の笑みを浮かべる。
「初めて介護士の役、初めてのフランス語にもちょっと挑戦させていただいたりと、初めてのことが多くて不安なことがたくさんあった」という横浜さんは、「監督と(美里役の)橋本マナミさん、そして(牧田役の)星由里子さんにすごく助けてもらいながら、やらせていただきました」と振り返る。続けて、「僕はただ、がむしゃらにやらせていただいたので、実際に(映像を)見たとき、いくつになっても変わらない純粋な乙女心、恋心を持っているのがすてきだなと。見ている方々にもそう思っていただけたらいいなと思います」とアピールする。
八つのエピソードの上映順も利いているが、「最初ポンポンとコミカルなのがきたと思ったら、意外とずしっとくるものもあったりと盛りだくさんでした」と桜田さんはうなずき、「オムニバスでショートというところもいいですが、、この作品の続きが見たいというのも結構ありました」と率直な感想を口にする。一方、横浜さんは、「いろんな片思いが詰まっている作品で、見ている方がどれかの作品に共感したり、こういう恋愛をしたいと思ったり、こういう片思いの仕方もあるんだとか、一本の映画でいろんなことを感じられると思うので、たくさんの方に見ていただいて、いろいろと感じていただきたいです」と力を込める。
女性の観客はもちろん、男性に勧めるとしたら……。「僕の中では結構、純粋な男性も生き残っていると思っていて、そういう方たちが見ればすごく刺さるというか、その気持ちを大事にしようと思ってもらえれば、同時にその人が思う幸せな女性が世の中に増えるはず」と持論を述べ、「これを見て真面目な男性が増えてほしいですし、この映画を見て感動できない男とは友だちにはなりたくないです(笑い)」と笑顔ながらも真剣に語る。
横浜さんも大きくうなずき、「これで本当に感動しなかったら、ちょっと問題あるというかひねくれているのかなと(笑い)」とちゃめっ気たっぷりに表現し、「僕は純粋に見てほしいなと思います」とメッセージを送った。映画は全国で公開中。
<桜田通さんのプロフィル>
1991年12月7日生まれ、東京都出身。ミュージカル「テニスの王子様」(2006年)で主役を務め、映画「劇場版さらば仮面ライダー電王ファイナル・カウントダウン」(08年)では野上幸太郎役で主演。主な出演作に、ドラマは「チーム・バチスタ2 ジェネラル・ルージュの凱旋」(フジテレビ系)、「弱くても勝てます ~青志先生とへっぽこ高校球児の野望~」(日本テレビ系)など、映画は「BECK」(10年)、「がじまる食堂の恋」(14年)、「orange-オレンジ」(15年)などがある。16年7月期のドラマ「こえ恋」(テレビ東京系)に出演。
<横浜流星さんのプロフィル>
1996年9月16日生まれ、神奈川県出身。12年に特撮ドラマ「仮面ライダーフォーゼ」(テレビ朝日系)でテレビドラマに初出演し、14年には特撮ドラマ「烈車戦隊トッキュウジャー」(テレビ朝日系)にトッキュウ4号/ヒカリ役で出演し注目を浴びる。15年には舞台「スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE~さよなら絶望学園~」で単独初主演。主な出演作に、「ジョーカーゲーム」(12年)、「中学生円山」(13年)、「オオカミ少女と黒王子」(16年)、「シュウカツ」(16年)などがある。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)