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注目映画紹介:「ミモザの島に消えた母」 美しい島を舞台に家族の秘密が明かされる

 映画化もされた「サラの鍵」の原作者タチアナ・ド・ロネさんのベストセラー小説を原作にした「ミモザの島に消えた母」(フランソワ・ファブラ監督)が、23日から公開される。30年前の母の死因を解き明かそうとする息子を主人公に、四世代家族の秘密が、美しい海に囲まれた風光明媚(めいび)な避暑地を舞台に繰り広げられていく。

 離婚をして精神的に不安定なアントワン(ローラン・ラフィットさん)は、10歳の頃に亡くした母のことが気にかかっていた。母の命日に久々に実家を訪れたアントワンは、祖母の家の元家政婦ベルナデット(リーズ・ラメトリーさん)から、母の死について思いがけない事実を聞かされる。しかし家族に母の死について聞いても、口を閉ざされてしまう。死の真相を突き止めようとする兄のことを、妹のアガッタ(メラニー・ロランさん)は冷めた目で見ていた。30年前。冬にミモザの花が美しく咲き乱れる島で死んだ美しい母には、ある秘密が隠されていた……という展開。

 アントワンの人生は、離婚、仕事、反抗期の娘と、何一つうまくいっていない。彼の時間は、母を亡くした10歳のときで止まっている。人生が立ちゆかないのは母の死を乗り越えられていないから。そう感じたアントワンによって、母の死因についての追求が始まる。すでに再婚をし、過去を封印したがっている父。母との関係があまりよくなかった祖母。アントワンの追求は、その話題をタブー視する身内にさざ波を立てながら、次第に大きな波となり、緊張を増幅していく。

 謎めいた美しさを持つノアールムーティエ島が、母の過去をのみ込むミステリアスな場所としてうってつけ。陸から切り離された島の閉塞感が、アントワンの一家のゴタゴタをなおさら息苦しくさせる。家族だけでは、きっと堂々巡りで何の変化ももたらさなかっただろう。だが、アントワンの娘や恋人によって、変化の兆しが見えてくる。大人の事情によって真実が語られなかった母の死因と、若かりし母のもう一つの顔が、情感豊かな映像でつむがれるとき、家族全員の苦悩が繊細に浮き彫りになってくる。「アンタッチャブルズ」(2012年)のラフィットさん、「人生はビギナーズ」(12年)などのロランさんというフランスの実力派俳優が兄妹を演じている。ヒューマントラストシネマ渋谷(東京都渋谷区)ほかで23日から公開。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。夏が嫌いです。

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