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俳優の松山ケンイチさんがかつて実在した伝説のプロ棋士・村山聖九段を演じる映画「聖の青春」(森義隆監督)が19日から公開される。怪童・村山九段を演じるため、体重を約20キロ増量したという松山さんの驚異の役作りはもちろん、村山九段のライバル・羽生善治さんを演じた東出昌大さんとの、指し方や仕草をプロ棋士そのものと言っていいほど再現した対局シーンは特に注目したい。実際に1時間の持ち時間で2時間にわたって棋譜をなぞったいう対局シーンは、実際の村山と羽生の対局中の気迫まで乗り移ったかのような緊迫感にあふれたシーンに息をのむ。
映画は、大崎善生さんのノンフィクション小説「聖の青春」(角川文庫、講談社文庫)が原作で、「東の羽生、西の村山」と称されるほどの実力を誇りながら、難病のため29歳の若さで亡くなった村山九段の生涯を描いている。目の前に立ちはだかる天才棋士・羽生を倒すため、病気を抱えながら上京した村山六段(当時)は「名人」を目指して快進撃を続けるが、いよいよ羽生を射程に収めたところで体にがんが見つかり……というストーリー。村山九段の弟弟子の江川貢役で染谷将太さん、師匠の森信雄七段役でリリー・フランキーさん、母親役で竹下景子さんが出演しているほか、安田顕さん、柄本時生さん、鶴見辰吾さん、北見敏之さん、筒井道隆さんも出演。現役の人気棋士も何人か登場する。
やはり、公開前は松山さんの“20キロ増量”が話題を集めることになったが、それを抜きにしても、松山さんと東出さんの本人が乗り移ったかのようなハマり具合が素晴らしい。歯に衣(きぬ)着せぬ物言いだが純粋で、周囲に愛されていたという村山九段の人柄がにじみ出ているような松山さんの演技はもちろん、松山さんが今作の“ヒロイン”という羽生善治さんを演じる東出さんも、頭をかく仕草や首のかしげ方、対局時の手つきや所作に至るまで、羽生ファンをも納得させるに違いない好演だ。特に対局を終えてから行う感想戦のシーンは、プロ棋士同士かと思わせる完成度。小声でボソボソ交わすせりふなどは、将棋ファンならニヤリとしてしまうことだろう。
おそらく膨大な研究と将棋への愛で、松山さん、東出さんともに「この人しかいない」という迫真の演技を見せてくれた。19日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開。(河鰭悠太郎/MANTAN)