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遠藤周作の小説を、「ギャング・オブ・ニューヨーク」(2002年)などで知られる巨匠マーティン・スコセッシ監督が映画化した「沈黙-サイレンス-」が、21日から公開される。西洋と東洋の信仰の違いや、人として生きる価値とは何かなど、己の真価が問われるヒューマン作だ。スコセッシ監督は28年間、この企画を温めながら、己の信仰心への問いかけや日本への理解を深めていき、「今だから撮れた」と語っている。キャストには日米の名優が顔をそろえる中、窪塚洋介さんが今作でハリウッド作に初出演。人間くさく複雑な役どころのキチジローになり切っている。
17世紀。江戸初期の長崎で、棄教したとされる師匠フェレイラ(リーアム・ニーソンさん)を捜しに、ポルトガル宣教師ロドリゴ(アンドリュー・ガーフィールドさん)とガルペ(アダム・ドライバーさん)が日本にやって来る。キチジロー(窪塚さん)を通じて、隠れキリシタンの村人たちと親交を深めるが、キリシタン弾圧が激しさを増していき……という展開。「96時間」シリーズや「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」(12年)のニーソンさん、2代目スパイダーマンとして知られるガーフィールドさんらハリウッドの人気俳優はもちろん、窪塚さん、浅野忠信さん、小松菜奈さん、イッセー尾形さん、加瀬亮さんら日本人キャストも多数出演している。
窪塚さんが演じたビデオを見てスコセッシ監督が気に入り、今作への出演が決まったという。強い者に弱く、自分が可愛く、気が小さいのに、時に大胆。まるで子どものような無邪気さもあり、宣教師ロドリゴの信仰心をかき乱すキチジロー。窪塚さんはそんな多面性を持った親しみを持てるキャラクターを作り上げることに成功している。
イッセーさんが演じる井上筑後守は、キリシタンたちに、まずは優しげに信仰をすてさせようと迫る。いやらしい笑みを浮かべる井上に、キリシタンから「転んだ」過去を持つ複雑な心境まで見えてくる。イッセーさんはこの演技で、LA批評家協会賞で助演男優賞の次点に選ばれた。ほかにロドリゴに棄教を迫る通辞役に浅野さん、キリシタンの村人役に小松さん、加瀬さん、モキチ役で映画監督の塚本晋也さんが出演。小松さんもハリウッド作に初出演となった。
スコセッシ監督の入魂作で、今年度のアカデミー賞の主要部門にどれくらい食い込めるか24日のノミネート発表が楽しみなところだ。もし監督賞や作品賞を受賞したら「ディパーテッド」(06年)以来11年ぶりとなる。21日からTOHOシネマズ六本木ヒルズ(東京都港区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)