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俳優の中川大志さんが「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」(ヨアヒム・ローニング監督、エスペン・サンドベリ監督)で実写映画の吹き替えに初挑戦した。中川さんは、同作の日本語吹き替え版で、ジョニー・デップさんが演じる海賊ジャック・スパロウと共に冒険を繰り広げる若者、ヘンリー・ターナーの声を担当している。中川さんが、吹き替えの苦労や映画の見どころ、さらに自身の趣味と今作のつながりについて語った。
◇ワクワクより衝撃
「危なかったですね。もう倒れようかなというぐらい(笑い)。言葉が出ないというか、あ然というか。現実感がないんですよね。スターの存在感に圧倒されました」。中川さんは、インタビューの前日(6月20日)に開催されたジャパンプレミアで、憧れの俳優であるデップさんと対面し、ハグされたときの気持ちをそう語る。中川さんが声を担当したヘンリー・ターナー役のブレントン・スウェイツさんに対しては、「本当に役のままというか、すごく明るくて、優しくて、気さくで、カッコよくて(笑い)、好感しかないような方という印象です。すごく日本を楽しんでくださっているみたいで、よかったなと思います」と笑顔を見せる。
日ごろから洋画と邦画は「半々ぐらい」の割合で見るという中川さん。ハリウッド映画に限らず、「古めの洋画も好きで、いろいろ見ている」といい、好きな洋画に、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(1985年)や、「アルマゲドン」(98年)、「バタフライ・エフェクト」(2004年)、「スクール・オブ・ロック」(03年)、「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」(97年)を挙げる。
「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズには、「冒険って、男は絶対に憧れるし、音楽を聴いただけでワクワクする。本当に、楽しくて、カッコよくて、迫力があって、とにかくワクワクする映画」という印象を抱いていた。今回、その映画に自身が参加することになり、さぞかしワクワクしただろうと思いきや、「いえ、ワクワクしませんでした(笑い)。怖かったです」とのこと。「お話をいただいたときは、もちろんうれしかったんですが、想像もしていなかったことが起きたので、驚いて、衝撃で、えっ、『パイレーツ』って、あの『パイレーツ』? なんの話をしているんだろうと最初は信じられなかった」という。
◇ブレントンの気持ちを考えながら
これまでアニメの声優は経験したことがあったが、実写は初めて。それだけに、「難しいことや戸惑うことがいろいろありました」と語るも、「とにかく、ブレントンがどういう気持ちで、どういうニュアンスでお芝居をしているんだろうということを考えながら」収録していったという。「僕は現場を見ていないので、とにかく映像を何回も何回も見て、そこに自分がいるように、気持ちを置き換えて演じました。それに、一つ一つの言葉を伝えなければいけないので、細かいイントネーションが難しかったです。当たり前のことではあるのですが、そういう当たり前のことが新鮮でした」と振り返る。
吹き替え版での中川さんの声は、おせじ抜きでヘンリーの声にはまっており、映画を見ているうちに、スウェイツさんの声が中川さんの声だと思い込んでしまうほどだ。その感想を伝えると、中川さんは「本当ですか。信じていいですか。うれしいですね。本当にうれしいです」と心底喜びながら、「吹き替えで映画を見るときって、特に子供のときは、その役者さんはこうやってしゃべるんだと思い込んで見るじゃないですか。それぐらいキャラクターと声が一つになっていないといけないという思いがあったので、そう言っていただけると本当に安心します」と安堵(あんど)の表情を浮かべる。
これを機に、今後どのような声をやってみたいかと尋ねると、「いやあ、そんなお話がいただけるのであれば、なんでもやりますけど……」と恐縮しながら、「めちゃくちゃ高い声の役とか女の子の役でなければ、やってみたいですね」と控えめに答えた。
◇自立した女性はカッコいい
印象に残るシーンに挙げたのは、栗山千明さんが声を担当した女性天文学者、カリーナ・スミス(カヤ・スコデラリオさん)が、ジャックとヘンリーと共に乗るボートから海に飛び込むシーン。「あの状況で、あんなボロボロの手こぎボートで逃げるという選択がジャックらしいし、いつも危ない橋を渡って、てんやわんやの状況に付き合わされる若者2人という構図が面白くて。ヘンリーは真面目なので、ジャックに振り回されて、そこで生まれるギャップが面白いですし、ヘンリーの『足首が見えた』というせりふも面白かったですし(笑い)。あそこは何パターンか言い方を変えて録(と)りました。あそこにヘンリーのピュアな感じが出ていたと思います」と語る。
中川さん自身、ヘンリーに共感したのは、父ウィル・ターナー(オーランド・ブルームさん)を救いたいという思い。「もし自分がああいう状況になったら、あそこまで勇気ある行動ができるかどうか分かりませんが、父親を救いたいという思いで旅が始まるというところは、すごく共感しました」という。一方、カリーナのような自立した女性に対しては、「すてきだなと思いますね。自分の意志をちゃんと貫くというか、やりたいことがあって、そこに向かって自分がぶれない人、そういう自立している女性はカッコいいなと思いますし、尊敬できます」と思いをはせる。
ヘンリーの両親、ウィルとエリザベス(キーラ・ナイトレイさん)は、10年に1度しか会えないという運命を背負っている。2人の夫婦愛を「壮絶な愛」と評した中川さんは、「でも、ヘンリーがあの2人の子供だと思うと、すごく不思議です。うん、あの2人の子供ですからね……」としみじみしながら、「でも今回、カリーナとヘンリーが立ち位置的に、ウィルとエリザベスと重なるんですよね。ジャックに振り回されている感じが。それがいいですよね」と、ウィルとエリザベスが作品にもたらす効果に言及した。
◇今はなんでもやっていきたい
目下、ドラマや映画に引っぱりだこの中川さんだが、自身では今の状況をどう感じているのだろうか。「意外と自分の時間はありますし」とそこまで忙しいとはとらえていないようで、むしろ、「今は、自分を型にはめず、どんどんいろんなことに挑戦して、目まぐるしく時間が過ぎていく時期だと思うので、なんでもやっていきたいと思っています」と前向きに語る。「自分の時間」には、「部屋の片づけをしたり、趣味の釣りをしたり、友達と会ったり。あとは台本を読んだりしている」という。ちなみに、最近まで映画を撮っていた長崎では、撮影の合間に釣りをし、カサゴやアジを釣ったそうだ。
中川さんによると釣りの醍醐味(だいごみ)は、「いわば“ハンティング”(狩り)なので、男の本能ですよね(笑い)。釣る、捕獲するという、ある種、宝探し的なところ」で、その感覚は「海賊と一緒」なのだという。話がうまく映画に戻ったところで、映画をこれから見る人へメッセージをお願いすると、「本当に夏にぴったりの、ジェットコースターのような、最初から最後までクライマックスなんじゃないかというぐらいの、迫力のある音楽とアクションと映像と、パイレーツの世界が待っていますので、本当に楽しんでもらえると思います」と力強くアピール。それから、「あのお……」と遠慮がちに言葉を続け、「吹き替え版の方もぜひチェックして、楽しんでいただけたらと思います」と結んだ。映画は7月1日から全国で公開中。
<プロフィル>
なかがわ・たいし 1998年6月14日生まれ。東京都出身。「半次郎」(2010年)で映画デビュー。主な出演ドラマに、「家政婦のミタ」(11年)、「花の冠」(12年)、「夜行観覧車」(13年)、「南くんの恋人~my little lover~」(15~16年)、NHK大河ドラマ「真田丸」(16年)など。映画に「四月は君の嘘」(16年)、「きょうのキラ君」「ReLIFEリライフ」(共に17年)など。公開待機作に「坂道のアポロン」(18年)がある。 (取材・文・撮影/りんたいこ)