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人気グループ「嵐」の大野智さんの主演映画「忍びの国」(中村義洋監督)が全国で公開中だ。映画は、和田竜(わだ・りょう)さんの歴史小説「忍びの国」(新潮文庫)が原作。戦国時代、天下統一に向けひた走る織田信長が唯一、手出しすることを禁じた伊賀の国の“史上最強の忍び”無門(大野さん)が主人公で、織田軍と伊賀忍び軍団による知略謀略が張り巡らされた壮絶な合戦を描いている。今作で、無門の妻で安芸の武家からさらわれてきたお国を演じた石原さとみさんと中村監督に撮影秘話などを聞いた。
◇石原さとみは「すごいところを突いてきた」
――石原さんと監督のツーショット取材は今回が初めてということですが、お互いの第一印象は?
中村監督:最初にお会いしたときのさとみちゃんの質問の量が結構すごくて。量というか、(質問の内容が)「おお、そこか、確かにそこ俺、甘かったな」というのがあって。今までずっと映画をやってきて、(自分は)女の人の描き方はそんなにうまくないな、とうっすら思っていて(笑い)。ちょっと苦手だよなと思っていたので、お国中心で原作を読み込んで、それによって脚本の直しもしていたんだけれど、それでも(石原さんから)質問されることがある。まだ足りなかったんだっていうのがあって……。
――どんな質問だったんですか。
中村監督 一番覚えているのは最後に「おのれらは人間ではない」と言ったときに「下忍たちは何かが変わったんですか?」って。そのときは「この人たちは変わんねえよ」って言ったんだけど、そのときに(石原さんが)ムッとした感じがして(笑い)。俺は軽い気持ちで答えたんだけど。6月中にその話をして9月の中盤、3カ月後くらいに撮影して。撮っているときに、無門の顔もそうだし、これは下忍も変わるなと思って。(石原さんは)すごいところを突いてきたんだなって、現場で改めて思いました。
それまで(撮影を)2、3カ月やってきて、これでも変わらないキャラクターとして下忍たち一人一人で作ってきていたから、このシーンも「お前たちの考えでいいから」って撮ったカットが、心を打たれているように見える人もいるし、全然の人もいるし。あれが一番映画の中で好きなカットですね。さとみちゃんが言ってくれたから撮れたなというのがありました。
石原さん:ああ、うれしい。
中村監督:第一印象は?という質問と全然違う答えになっちゃったけど(笑い)。
――石原さんは、中村監督の印象は?
石原さん:(自分がした質問に)監督は全部、的確に答えてくださいました。最初から一貫して変わらないんですけれど、初めましてのときも現場で待ち時間に何か聞くにしても、明確な言葉で、鋭くなく、優しさをベースにして伝えてくださるので、すんなり受け止められました。だから作品がドライじゃなくて、ちゃんと熱がずっとあるものを作られている方なんだなと、現場で見ていても、出来上がりを見ても、すごくよく分かりましたね。
映画も客観的に見て、作品を通してはもちろんなんですけれど、アクションシーンだけ見ても、めちゃくちゃ面白かったんですよ。単純に石原さとみとしてこの現場を経験してみて、「あっ、中村監督はアクション映画が好きなんだな」と思いました。
あと、この作品の中で一番大事なのは「無門の変化」であって、そのために要素として、それぞれのキャラクターが脇にいるんだなって。
◇無門に対して「母性が尊敬に変わった」
――お国のキャラクターは純粋で真っすぐなお姫様と感じましたが、石原さん自身はお国をどういう人だと思って演じましたか。
石原さん 武家の娘なんですけれど、無門に連れ去られたとはいえ、意思がなければ人は動かないし、自分でちゃんと行動できる人だと思いました。無門って孤独だったり、陰が見える人で、そういう人ほど、女の人って母性を感じたりするから、その中で(無門に対して)侍になってほしいとか、成長してほしいとか、もっとお金を稼いできてほしいとかという期待を厳しく言葉で伝える人なんだなと思いました。
最初母性だったのが、尊敬に変わって、無門がいなくなったって、ずっとそばにいてくれた無門が、どんなことでも怒らず、声を荒らげず、お国に優しく接していた人だったと。当たり前だった人がいなくなるということで、苦しくなったあとに、無門が生きていて戻ってきてくれたから、ちゃんと大切にされていた、大切だったということが分かった上で、最後を迎えたというのはお国としてはよかったなと思います。無門は多分、そのあと人を斬らなかったんじゃないかな。多分そこにお国が生きていた意味があるのかなと思いました。
――監督としてはお国のキャラクターはどういう人だと思って、石原さんに演技をつけようと思いましたか。
中村監督 突き詰めていえば、この映画は先ほどさとみちゃんが言ったように「無門が変わる話」なんですよ。それがうまくいくのかどうかがすごく不安で、現場でも(保険で)いろんなせりふを撮っているんですが、そういう補強したシーンがいらなくなった。さとみちゃんや大野君の表情でいけたから。大野智と石原さとみ、そのほかのキャストが(監督の予想よりも)もっといい役者だったから、信じられると編集していて思ったんですよね。
さとみちゃんと大野君の表情って、せりふのいらない演技であって、(保険で撮っていたせりふやシーンが)全然いらなかった。
◇大野は「こちらが変わったら変えてくれる人」
――石原さんは、現場で大野さんと夫婦のシーンを2人でこういうふうにしようとか話し合いましたか?
石原さん:全然してないです。
中村監督:しないよね(笑い)。俺と大野さんも全然しないから。あの人は内容のことを何もしゃべらないんですよ(笑い)。
――大野さんは、ナチュラルに現場に来られる人だった?
石原さん:そうですね。こちらが変えたらそれに合わせて変わってくれる人。だからキツい目線をしたらギョッとしてくれるし、優しくしたら「うーん」と対応してくださるし。
中村監督:さとみちゃんもそのタイプ。そんな俳優さん、女優さんばっかりになってくれれば僕はうれしいんですけれど。さとみちゃんや大野君は、いい意味でせりふだけ覚えて現場に来る。「よーいスタート」となったらほかのことは何も考えないで、相手や状況や場所などに委ねて演技をする。さとみちゃんや大野君、知念(侑季)君もそうだけど、いい役者さんって、カットかかったら、3、4秒ボーッとなっている。そういう人たちは(役にナチュラルに入り込んでいるから)すぐには自分に戻れないはずなんですよ。
――石原さんは、ひょうひょうとした無門みたいなタイプの男性はお相手としていかがですか。
石原さん:何の仕事しているかイマイチわからない男性は厳しいかな……(笑い)。演じている大野さんはすごくすてきな方ですけどね。無門というか、忍びということ自体、私は受け付けられないので、申し訳ないですけれど(笑い)。
◇女性目線で感じ取ってもらいたいことは…
――最後にお二人に、この映画のここを見てほしいというポイント、こういうことを感じてほしいということを教えてください。
石原さん:他の皆さんはアクションとかもあると思うんですけれど、私の役でラブストーリーの目線でいくと、帰れる場所があるとか、守りたい人ができたとか、お金を稼ぎたい動機が大切な人のためとか、元が変わると人って心が美しくなる気がします。強くなるというか。女性にはそういうことも感じ取ってもらえたらなと思います。もちろん男性にも。
中村監督:見てほしいポイントはいっぱいありすぎてね……。昔から忍者が好きだし、忍びの術などをいい加減には撮っていない。ちゃんとからくり、仕掛けを映し出しているので、そういう映画はなかなかないと思っています。そして役者さんは今回、みんな演技がよかったな、と。
<中村義洋監督のプロフィル>
なかむら・よしひろ 1970年8月25日生まれ、茨城県出身。大学在学中にぴあフィルムフェスティバル準グランプリを受賞。崔洋一監督、伊丹十三監督らの助監督を経て、99年、「ローカルニュース」で劇場映画監督デビュー。2007年、「アヒルと鴨のコインロッカー」のヒットで注目を浴びる。監督作に「チーム・バチスタの栄光」(08年)、「ジェネラル・ルージュの凱旋」(09年)、「ゴールデンスランバー」(10年)、「映画 怪物くん」(11年)、「奇跡のリンゴ」(13年)、「予告犯」(15年)、「殿、利息でござる!」(16年)などがある。
<石原さとみさんのプロフィル>
いしはら・さとみ 1986年12月24日生まれ、東京都出身。2003年、主演映画「わたしのグランパ」(東陽一監督)で本格的な映画デビューを果たす。同作でブルーリボン賞、報知映画賞などで新人賞を受賞した。同年、NHK連続テレビ小説「てるてる家族」でヒロインに抜てきされた。16年の「シン・ゴジラ」(庵野秀明総監督、樋口真嗣監督)で日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。同年、ドラマ「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」で主演を務める。