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荒川弘さんのマンガを基に、人気グループ「Hey! Say! JUMP」の山田涼介さん主演で実写化した映画「鋼の錬金術師」(曽利文彦監督)が1日に公開され、先週末の観客動員数で首位発進した。「鋼の錬金術師」は、荒川さんが2001~10年にマンガ誌「月刊少年ガンガン」(スクウェア・エニックス)で連載されたマンガ。錬金術が科学のように発達した世界を舞台に、エドワード・エルリック(エド)と弟のアルフォンス(アル)が、失った体を取り戻すための旅を繰り広げる。エドたちの前に立ちはだかるホムンクルス(人造人間)のエンヴィー役を演じた本郷奏多さんに話を聞いた。
◇ホムンクルスという難役を熱演
連載終了後も多くのファンに愛されている「鋼の錬金術師(ハガレン)」が実写化されることについて、「最初に実写化の話を聞いたときは、正直どうなのかな、大丈夫かなって思うところも、実はあったりしました」と本郷さんは率直な思いを打ち明ける。だが完成した映像を見て「その不安が一気に払拭されたというか。すごい作品が出来上がったと感じました」と自信が持てたという。
本郷さんが演じるエンヴィーは、変身能力を持つホムンクルス。「(エンヴィーは)変わった格好だし、変わった髪形なので、どう映っているのかと思いながら撮影していたんですけど……どうでしょう」と自身でも問いかけながら撮影に臨み、「普段だったら完成した映画を見たとき、もっと手応えがあるんですけど、今はこれがどうなのか正直分かっていないところ。見てくださる皆さんがどう感じるか、正直まだ分かりません」と神妙な表情で語る。
役作りでは、「非常に難しい役なので、何とも言えないんですけど、マンガだったりアニメだったりのイメージをなるべく再現できればと思って演じました」と切り出し、原作で細身にも筋肉質にも描かれている点に関しては、「監督と最初に(細身と筋肉質)どっちで行こうかみたいな相談をして、筋トレでしっかりと筋肉をつけた方がよければつけますという感じだったのですが、『どっちもありだと思うけど、謎な感じがあった方がよくて中性的なイメージ』と監督がおっしゃったので、面倒な筋トレはすることなく、ぬるっと(撮影に)入りました(笑い)」と冗談交じりに話す。
エンヴィーの体形について、原作の荒川さんに質問する機会があったと明かし、「『エンヴィーは先生の中で細身なんですか。筋肉質なんですか』と質問をさせてもらったら、先生の回答は『そこまで考えてなかった』と(笑い)。だからよかったんじゃないかなと思います」と笑顔を見せる。
クライマックスシーンでエンヴィーは重要な役割を担っているが、「あれは原作ファンからしたらうれしいと思います」と本郷さんは言い、「もともとあのシーンは台本の段階ではなく、監督がエンドロールの後に撮ろうかなと現場で言っていました」と明かす。
続けて、「完全に冗談だと思っていたのですが、作ってくださって僕的にはすごくうれしかったです」と喜び、「曽利監督はとてもすてきな方で、非常に尊敬しているんですけど、結構柔らかくて、いろんな人のことを気にするタイプだと思うんです。だから僕があまり出てないと思って足してくれたのではと思っています(笑い)」と分析する。
◇映画キャラの中ではヒューズが一推し
もともとハガレンが大好きだという本郷さんに、原作ファンとして、すごいと感じた表現を聞くと、「錬成シーンは本当に迫力があってカッコいい。錬成陣って光るんだとか、錬成したらその分、どこか減っているなど、当たり前ですけど、ちゃんとこだわって作っている」と錬成シーンに感心したという。
さらに錬金術師の最大のタブーである人体錬成を試みた者がたどり着く「真理の扉」の表現にも本郷さんは驚かされたと言い、「『真理の扉』の中の表現はこう来たか、と。白い煙のような、そして山田さんで撮ったであろうパーツがあって……という表現はすごいなって。そこに関しての表現方法はマンガにも負けないぐらいだなと思いました」と目を見張る。
曽利監督に聞いたところによると、「もっとほかのドンパチやっているところの方が大変だと思っていたらしいんですけど、実は真理の扉が『かなり地味に大変だった』と監督がおっしゃっていました」と打ち明ける。
実写映画の中で好きなキャラクターは、「ヒューズが推しメンです」と言い、「佐藤(隆太)さんが本当にヒューズにはまっているというか、優しいし、仲間思いだし、家族思いだし、人がよくてちょっと不器用という、原作のイメージのヒューズを完璧に体現していらっしゃって。本当にヒューズにしか見えないし、他の人ではちょっと想像できないと思うぐらいはまっていると思います」と理由を説明する。
◇主演の山田からの粋な計らいに感動
原作のエッセンスをまとめ上げた映画の中では、「エドとアルがケンカをするところが、すごくグッときました」と話し、「アルが自分の抱えている不安や思いをぶつけて、それをエドが全部聞いて受け止める。エドは不器用だから言葉じゃなく心と体でぶつかってアルとの絆を取り戻す。あのシーンの山田くん、すごくすてきでした」と言ってうなずく。
また、主演の山田さんを「ものすごい役者さん」と評し、「ケンカのシーンは山田くんのお芝居のよさがすごくよく出ていたなと思います。(撮影は)何もない相手とやっているわけで、お芝居は難しかったはずなのに、すごくすてきでした」と改めて感激を口にする。
山田さんとの共演シーンも印象に残ったそうだが、ジャパンプレミア当日のことがかなり印象に残っていると本郷さん。実は当日が本郷さんの誕生日だったのだが、「僕はばれないようにというか、ひっそりと過ごしていたんですが、(山田さんが)帰り際、すごくスマートなタイミングで『奏多くん、これ。おめでとうございます』と言ってプレゼントを渡してくれて、マジで恋しました(笑い)」と山田さんからのサプライズを明かし、「スマートさと心遣い、そのタイミングしかり。カッコいいなと思いました。(現場で)しっかり真ん中に太い柱として立っていて、人を引きつける求心力のある人だなと思いました」と本郷さんはたたえる。
◇最近はまったマンガは…
今作も含めてマンガ原作の実写化作品に本郷さんは数多く出演しているが、「原作を大事に、そのままのイメージができればと思って毎回やっていて、喜んでもらえるなら、それが“正解”かなと思っています」とマンガ原作ものへの取り組み方を語る。だが、「僕も原作ものに結構出させてもらっていると思いますが、一番マンガ原作に出ているのは(ドクター・マルコー役の)國村(隼)さん説が浮上しています(笑い)」と持論を語る。
その理由として、「『ジョジョ(の奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章)』とか『進撃(の巨人 ATTACK ON TITAN)』とか、たしかにかなり出てるんです。しかも重要な役どころで」と説明し、「國村さんを直属の先輩だと思っています」とちゃめっ気たっぷりに言って笑う。
最近はまったマンガは「いぬやしき」で、「(実写化した映画に)出ている作品名を言うのもあれなんですが……」と本郷さんは恐縮しつつ、「『GANTZ』をはじめ奥(浩哉)先生の作品が好きなので、すごく面白いと思って読んでいたら、出演できることになってうれしかったです」と笑顔を見せる。
錬金術の原則は「等価交換」だが、本郷さんが錬成するとしたら……? 「加齢とともに劣化していくと思うので、自分のきれいなところの皮膚、たとえばお尻とか(の皮膚)を顔(の皮膚)に交換していきたい。対価としてお尻が汚くなっていきますが(笑い)」と言い、「髪の毛とかも切らないでいいかもしれない。髪が伸びたなと思ったら、手をパンと合わせて(髪の毛が伸びた分)腕の毛とかを伸ばして切るだけでいいみたいな。そういうことをやっていきたい。意外と便利かもしれない」と楽しそうに語った。映画は全国で公開中。
<プロフィル>
ほんごう・かなた 1990年11月15日生まれ、宮城県出身。2002年に映画「リターナー」で俳優デビューし、05年公開の「HINOKIO」で初主演を飾る。近年の主な出演作に、ドラマ「ラブホの上野さん」(フジテレビ系)、「怪獣倶楽部~空想特撮青春記~」(TBS系)、映画「GANTZ」(11年)、「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」(15年)、「氷菓」(17年)などがある。18年には出演した映画「いぬやしき」の公開を控える。
(取材・文・撮影:遠藤政樹)